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ラグース2009

ザ・アイリッシュダンス ラグース 2009年来日公演
Ragús Show
11月20日〜11月23日 東京国際フォーラム ホールC
11月26日 下松市文化会館(スターピアくだまつ)
11月27日 ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
11月29日 呉市文化ホール
12月01日 岡山シンフォニーホール
12月02日・03日 サンケイホールブリーゼ
12月04日 京都会館第2ホール
12月06日 和歌山県民文化会館 大ホール
12月08日 練馬文化センター 大ホール
12月10日 ルネこだいら 大ホール
12月11日 聖徳大学川並香順記念講堂
12月12日 調布市グリーンホール 大ホール
12月13日 狭山市市民会館 大ホール
12月15日 愛知県芸術劇場 大ホール
12月16日 ホクト文化ホール 中ホール
12月19日 神奈川県民ホール
企画・招聘:光藍社
【公演プログラム】
デザイン:福田博史(イデア)
編集:光藍社
発行:グッドホーププロダクション
(写真下は2004年版サントラCD)
* * *
11月22日のソワレを観てきました。すでに初日とも演奏曲目が異なっているとの情報もありますが、そういうところもいかにもラグースらしいなあと思ったり。
今回で3回目となる来日公演ですが、ダンサーもミュージシャンも毎回異なっており、また上演プログラムも毎度大幅に変わるという、およそステージ・ショウらしからぬところがラグースの最大の魅力です。つまり、スタンスとしては(一定のストーリィのあるミュージカル・ショウや特定のスターあるいは目玉となる演目を擁するレビュー・ショウではなく)通常のミュージシャンのライブと変わらず、レパートリィの多彩さというか引き出しの多さを楽しむものであること。にもかかわらず、このショウぜんたいが「ラグース」としての一貫性を保ち続けているのは“大将”ファーガル・オ・マルクルの個性とプロデュース力によるところなのは、おそらく誰もが認めるところでしょう。もちろんこういうステージ構成が組めるのは、ダンサーにせよミュージシャンにせよ、それだけの豊富な引き出しを持っているからこそできる芸当ではあるんですが、それがそのままアイリッシュ・ミュージック/アイリッシュ・ダンスの汲めども尽きぬ魅力を体現している点がもっともすばらしい。彼らは無理に肩肘張って特別なことをやっているのではなく、実に自然体であり、アイリッシュの「伝統」と「いま」を等身大で表現しているんですよね。
上で「毎回変わっている」と書きましたが、実は5人の男性ミュージシャンに女性シンガー1人、女性ダンサー11人+2人の男性ダンサーという陣容は2006年公演、2007年公演とそれほど変わらず、プログラム内容にもいくつかの重複はあります。たとえば前回初めて観て感激した超すばやいポルカ〈West Kerry Gets Reel Set〉は今回もやってくれましたし、ジャズ風アレンジの〈Rights of Man〉(2006年プログラムに載ってます)もやっぱりかっこいい。にもかかわらず「今年は違う」と感じさせ、つねにどれもが初めて出会ったかのような新鮮さを観客に与えることができるのがこのショウのよいところ。
シンガーのディアドレ・シャノンは「ケルティック・ウーマン」に参加していたひとですが、彼女が登場する場面では現時点でのアイリッシュ・ポップスの最良の部分を聴かせ、演奏陣はソリッドなチューンを連発し、ダンサーたちはモダン・ステップ・ダンスにアイディア豊かなコンテンポラリーさを加味して(振付がおしゃれ!)飽きさせません。アイルランドの音楽やダンスに慣れていない人も、リバーダンス以降のモダン・ダンス・ショウを見続けているマニアックな層も、そしてよりトラディショナルな雰囲気を好む人たちも、それぞれがそれぞれに楽しめるように構成されています。これはたぶん想像より難しいことで、演じる側にそうとう幅広い知識と経験、技術とセンスが要求されることなんだと思います。そういう「離れ業」を軽々と、ごく自然体でやってのけるからたまりません。さきに<汲めども尽きぬ魅力>と書きましたが、ひとつのステージ上でこれほど多角的にアイリッシュネスを表現しようとしたショウはこれまでなかったし、おそらく今後も出てこないかもしれません。
男性ダンサーのひとり、2005年にリバーダンス公演で来日したマイケル・パトリック・ギャラガーは…残念ながらおなかが多少目立ってきてまして、ちょっとステップを踏むだけで肩で息をしている有様。うーむ、4年前はあんなに華麗な王子様キャラだったのに、この間彼になにがあったんだ。まあ、貴公子然としたノーブルさは相変わらず。その分、もうひとりのロナン・シャーロックがワイルドでやんちゃなダンスをみせてくれて、八面六臂の大活躍。彼のソロ、客席通路に躍り出るという趣向は新しく、たいへん楽しいものでした。もっとも、ステップ音はワイヤレスマイクで拾ってPAスピーカーから出力されるので、目の前の靴音とスピーカーから出る音が別々に聞こえてきて、なんだか奇妙な感じではありましたが。とはいえ観客としては大歓迎で、こういう自由で新しい試みがどんどん飛び出せるのがラグースの良さなんですよねえ。
クラン・コラ・ブログでおおしまさんが「バンドはこれまでの中で最もレベルが高い」とお書きですが、この点はまったく同感。みなとても自由に楽しんで演奏しているように見受けられ、それだけでこちらもニコニコしてしまいます(フィドルのファーガルがkazさんの義弟さんだとは!)。
個人的には、今年は怪我で入院していたこともあって、ダンス・ショウのステージはこれが今年に入って初めてのナマ舞台。いやあ、やはりライブはいいですねえ。オープニングのイリアン・パイプスが聞こえてきたときから、いや、その前のまだ客席がざわざわしている頃から、ちょっとうるうるしてました。来年はもっとたくさん観られたらいいなあ。もちろん、ラグースにも、これからも何度も何度も来てもらいたいものです。
2009 11 22 [dance around] | permalink
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comments
久々の公演、お疲れさまでした。
ラグースはとてもよかったですね!
ファーガルさんのボーカルをもう少し聞きたかったのですが
シャノンさんの歌もとてもいいなぁと思ったので、それはそれで満足です。
マイケル・パットさんは…面影があるだけになんとも(^^;
でも、RD来日メンバーがいてくれるのは嬉しかったりもしました。
posted: にーぐ (2009/11/24 2:03:07)
先日はありがとうございました!いやあ、とても楽しかったですね。時間があっという間に過ぎてしまいました。
そうそう、本文で書き忘れたんですが、アンコールでの大将のうたがとても素晴らしかった!彼のヴォーカルはもっと聴きたいっっ!
来年は夏にトリニティ来日でしたっけ。こちらも久しぶりなので、楽しみですね。
posted: とんがりやま (2009/11/24 9:18:04)
お久しぶりです、とんがりやまさん。
1ヶ月も日本にいるファーガルが羨ましい義姉です。
マイケルさんのお腹は、1年前にこちらでショーを見た時にもすでに・・・。
私も「あれ?」って思いました(汗)
女の子達も結構大柄な子が多いし!
ファーガルもこの調子でステージ上で飛び回って、
ちょっとスリムになって帰ってくるかな~(苦笑)
ラグースの良さは「ショウ」という華やかさがありながらも、
ちゃんと「アイルランドらしさ」が感じられるところだなぁ、って思いますね♪
posted: kaz (2009/11/24 18:39:27)
kazさん、ご無沙汰しています!
いやあ、ファーガル君、すごくかっこよかったですよ〜。エンターテイナーぶりを遺憾なく発揮してました。ああいう華って、学んでできるものではなく、天性のものなんでしょうね。そうそう、帽子のかぶり方もおしゃれでした(^_^)。
たぶん今回のラグースを観た誰もが思ったことでしょうけど、いつか彼自身のバンドでも来日して欲しいですねぇ。国際フォーラムのようなホール公演でも、小さなライブハウスやパブでのセッションでも、彼ならどこであっても自在に対応できる、そんなしなやかで自由な柔軟性をお持ちだとお見受けしました。
パットさんのお腹は…一緒に観ていた友人たち全員がショック受けてました(^_^;;;)
ともあれ、ツアーははじまったばかり。メンバーのみなさんには、体調に気をつけて、ぜひ晩秋の日本を楽しんでいただきたいものです。
posted: とんがりやま (2009/11/24 22:01:53)