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アスリートの写真集

 
 バンクーバー冬季オリンピック、いよいよ開幕!
 
 わたしは夏の五輪よりも冬が断然好きで(そのわりに寒さは苦手なんですけど) 、なかでも楽しみにしているのがフィギュアスケートとカーリング。カーリングの方は長野ではじめて知ってソルトレイクとトリノで夢中になったんですが、パワフルな男子の試合がいまからワクワク。もちろん日本代表が出場する女子も応援しています。
 一方、フィギュアスケートの方は…。そういやかつては、フィギュアの試合って年に一度のNHK杯くらいしかまともにテレビ放送していなかったので、冬の到来を告げるかのようなNHK杯がとても楽しみでした。そんな年一回のお楽しみが、4年に一度のオリンピックではもっとたっぷり観られるのだからたまりません。個人的にいちばんハマっていたのは88年カルガリーから98年長野のあたりでしょうか。あの頃は五輪中継をゆっくり見物できる時間的余裕もあったからなあ…(遠い眼)。とくに92年アルベールビルと、変則的に2年後開催となった94年リレハンメル、98年長野はそうとう夢中になっておりました。男子シングルの、カナダのエルビス・ストイコ選手とフランスのフィリップ・キャンデロロ選手のトップ争いなんてかなり熱中したものです。女子の方ではアメリカのミシェル・クワン選手がお気に入りで、いろいろ物議を醸したフランスのスルヤ・ボナリー選手なんかも好きだったなあ…などと思い出深い選手を挙げていけばきりがありません。もっとも、競技じたいはシングルよりもペアよりも、アイス・ダンスがいちばん好きなんですが。なかでも、ソビエト(当時)のウーソワ&ズーリンの95年シーズンだったかな? のプログラムには鳥肌が立ちまくりでした。
 21世紀になってからは民放がかなりフィギュアに力を入れていて、世界選手権やグランプリ・シリーズを地上波の、それもゴールデン帯でやってくれるのはまぁ嬉しいんですけど、男女シングルしか扱わないのはなんとも不満(それも民放特有の扇動的な内容ですしね。ありゃスポーツ報道というより芸能番組ですわな)。フジでも朝日でも、番組のなかでペアのペの字も、ダンスのダの字も(ほとんどと言っていいほど)出てきません。まあ、いまはCSがあるからいいんですけどね、別に。
  
 前回のトリノ五輪では、上のような民放テレビを含むスポーツジャーナリズムぜんたいが、なんだか変な熱に浮かされたようになってました。出場する日本人選手の大半がメダル確実、なんて超楽観的な事前予測もあったりして、でもフタをあけてみれば惨敗続き。かろうじて荒川静香選手の金メダルに救われた格好でした。たしかにあの金メダルには日本じゅうで感動を呼びましたが、たんにメダルの数を争うよりも、もっと競技そのものを楽しめばいいのになあと感じた方も少なくないはず。わたしは、先に挙げたストイコ vs. キャンデロロでは表彰台の順位よりも好きな選手がたがいに真剣勝負を繰り広げるさまに熱狂していたものです(なのでどの大会でどっちが何色のメダルだったか、とかは全然覚えておりません)。そう思うようになったきっかけはリレハンメルでの女子シングルアメリカ代表、ナンシー・ケリガン選手とトーニャ・ハーディング選手のスキャンダル騒ぎあたりで、以後は順位に一喜一憂するんじゃなくて、純粋に各選手のベスト・パフォーマンスが観たいっ! と強く思うようになりました。
 
 さて。最初に書いたように、冬季五輪で注目している競技はフィギュアとカーリングですが(それに開会式も毎回楽しみ)、それぞれ日本代表女子選手の写真集が出ております。
 
Shasinshu
(写真上から)
●浅田真央 奇跡(ミラクル)の軌跡
 新書館・刊 2010年2月1日初版
 ISBN978-4-403-31057-7
 装幀:SDR(新書館デザイン室)
 
●本橋麻里 Curling Life Book
 NTTラーニングシステムズ・刊 2009年12月24日発行
 ISBNコード記載なし
 デザイン:林哲也+井上純一
 
 浅田本は広く一般向けに書店で大々的に売られているのに対し、本橋本は書店流通ではなくネットでの販売のみ(ひょっとして試合会場なんかでは手売りしてたのかな?)、発行元のNTTラーニングシステムズは本橋選手の勤務先でもあるので、自社の選手のバックアップでもあるんでしょうけど(本書売り上げの一部は本橋選手の所属する「チーム青森」に寄付される由)まぁディープなファン層向けの限定本、なんでしょう。この2冊、本としてのつくりがまるきり正反対なのが面白い。
 

 
 『Curling Life Book』は、カーリングという競技じたいのガイド本という側面もあるのか、歴史やルールなどを手短に解説したコラムも載っていますが、カーリング選手として彼女のどこがどう優れているのかを分析したページやジュニア時代からの戦歴をまとめたページがもっとも興味深いです。もちろん試合中の写真もたくさん載っていて、フォームの美しさはやはりさすが、と思わせるものがあります。
 ただ、残念な点も多く、個人ブログの記事の再録はまあいいとして、個人的にいちばんいらないのがいわゆる「プライベート・ショット」。9ページにわたって、たぶん沖縄だろうと思うんですけど、南国で撮ったオフ写真がえんえん続きます。あと、これもありがちな、生い立ちだとか好きなタレントは? の類のアンケート。まあ、わざわざネット通販で購入するほど熱心な本橋ファンを相手にしているからこそこういうコーナーも企画されたんでしょうけど、あたしゃアスリートとしては関心があるけどアイドルタレント的な興味はまったくないので、本橋さんの好きな食べ物や映画だとか知らされても…ねぇ。人物部分だけがグロス印刷されているというムダに凝った印刷といい、なーんかぜんたいに勘違いしてるんじゃなかろうか。読み物としてはトリノ代表だった小野寺歩選手の書いた『カーリング魂。』(小学館/2007年3月)、カーリングのルールや競技としての魅力は『みんなのカーリング』(学研/2006年6月)、トリノ以降、バンクーバーに向けてのチーム青森の動向なら『Curling Girls』(エムジー・コーポレーション/2007年3月)やNTTラーニングシステムズ制作のDVD『CURLING LIFE』(2006年)『CURLING LIFE 2』(2008年)などの方が、よほど読み応え・見応えがあります。
 
 一方、コマーシャルにもたくさん起用されて一般に広くアイドル化している浅田真央選手の写真集の方は、予想以上にかなり立派な「競技写真集」となっていて、見ていてとても気持ちがいいですね。オフっぽい写真はわずか2葉のみ、あとはすべて競技会での写真という編集方針も潔い。写真はジュニア時代、2002年ごろから現在までが万遍なく集められていて、それぞれいつの大会でのものなのか写真データもきっちり掲載されているし、これまでの主なプログラムや戦績といった情報も網羅されています。衣装を見るだけで「ああ、これはあのときの」と思い出すものも多く、見ていて飽きません。このあたり、さすが古くから『WORLD FIGURE SKATING』という専門誌を発行し続けている版元ならでは、なんでしょうねえ。老舗の信頼感というか、長年の蓄積が大きくものを言っている感じがします。
 
 実はわたしフィギュアスケートは、ショウ形式のは何度も観に行ったことがありますが試合はナマ観戦はなし(カーリングともどもいつかはきちんと観戦したいというのが夢であります)。ですが過去に「メダリスト・オン・アイス」などで観た浅田選手はやはり独得の存在感を放っていて、とくべつ熱心なファンでもないのですがその演技にはいつも魅了されてました。シーズンごとに顔つきがどんどん変わっていくのも面白くて、やはりこの年代の少年少女たちは成長のスピードが速いなあ、と感心したり。この写真集を眺めていると、そんな昔の浅田選手にも多く再会できて、わずか数年前なのにとても懐かしかったりします。トリノ五輪には年齢制限のため出場できなかったんですが、当時の(社会的関心も集めた)鮮烈な演技がまざまざと甦ってくるようです。
 
 今シーズンの浅田選手はいろいろ言われているようですが、先にも書いたように、わたしはメダルだの順位だのには興味はありません。やり直しナシの、一回こっきりの勝負の場でどう振る舞い、どういう戦いをするのか。そういうところに注目してみたい。そして、この写真集にしっかりと記録されている彼女の「顔つき」が、今大会後どういう風になっているのか。そのあたりもちゃんと見届けたい。
 
 ジュニア時代から念願のオリンピック出場を果たした現在まで、それは浅田選手にとってひとつの区切りでしょう。それは、ただ漫然と観客席から、あるいはテレビ画面の向こう側から眺めている我々以上に、彼女自身にとって大きな区切りでもあるでしょう。このタイミングでの写真集の出版には、そういう意味も含まれているはずです。この本をパラパラと眺めているうちに、より一層、大会本番が楽しみになってきました。
 

2010 02 10 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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