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悪人顔
郊外の通学路なんかでよくみかけるタイプの防犯看板。
注目すべきはこの「知らない人」の顔で、黒メガネ・無精ヒゲ・ボサボサ頭という「記号」が使われております。べつに悪人でなくてもこういう兄ちゃんはそこらに普通にいそうなんですが、こういうのが一般的なイメージとしての「悪人顔」なんでしょうか。
でも、実際のところ、こういう顔をした「悪人」ってどれほどいるんでしょうね。
元旦のエントリにも挙げましたが、いかにも「泥棒」然とした泥棒なんて、まず皆無でしょう。<ほっかむりをして首に唐草模様の風呂敷を巻いている姿=泥棒>という「大衆的な記号化」がいつごろから始まったのか調べたら面白そうですが(元祖は鼠小僧次郎吉とかなのかな)、そのはじめからすでに、そんな格好をした「泥棒」なんて現実にはどこにもいなかったのではないでしょうか。
記号化された泥棒はあまりに古典過ぎてもはやギャグにもなりませんが、では上図のような悪人顔はどうなんでしょう。というか、「みるからに怪しそうな人」=「本当の悪人」というのもちょっとどうかと思うわけで。
水戸黄門なんかに出てくる悪代官のような、それなりの信頼性のある地位につき権力も持ってる人がじつは極悪人だった、という図式すらもはや古典ですよね。それどころか「みかけはいい人そう」な近所の人がとつぜん凶悪な事件を起こして町内会が大騒ぎ、ということだって「ふつう」によくあるわけで、だからなおさら「事件に巻き込まれないようふだんから注意しましょう」という防犯看板が必要になってくるんでしょうけど。
この看板の対象は小学生くらいの子供とその親でしょう。「文字だけじゃナニだからイラストでも入れておくか」くらいの気分で描かれた…というにはイラストの面積が大きいし、それなりにしっかり描かれたイラストなんで、あるていどよく考えた上で作られた看板ではあると思います。たしかにイラストがあるだけで注意喚起力が違いますし、ぐっとわかりやすく、伝わりやすくなっていますしね。それだけに、「知らない人」の顔をこういうふうに「記号化」することの危険性もそれなりに孕んでいるんじゃないかと。
要するに、「悪いこと」を企んでいる人って、表向きは「いかにも悪そうな」顔つきをしていないことの方が多いんじゃないか。「オレオレ詐欺」——これももう古典的といっていい犯罪ですが——のように、相手を安心させることから始まる犯罪手口だって多いわけで、だとすると上図の「知らない人」(誘拐なのかいたずら目的なのか知りませんが)だって、子供に声を掛ける時点ではもっと「親しみやすい顔」をしているんじゃなかろうか。
まあ、だからコピーの方では「悪い人についていかない」とは書かずに「知らない人」に連れて行かれないように、と書いているわけなんでしょうけど。
「知らない人」を図案化するというのはけっこう難しい作業かもしれません。だからといって、上図のような、特定の人格を想起させる「記号」を安易に使ってしまうのは、あまりよろしくないような気がします。
もしわたしがこの看板をつくるとしたらどうしよう。むしろ、さらに「記号化」を徹底させた方がいいかな。たとえば、こんな風に。
どうでしょうかね。
2010 02 01 [funny face] | permalink Tweet
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