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40年目の未来

 
 2010年、あの大阪万博から40年ということで、万博公園内に記念館ができております。旧鉄鋼館に去る3月13日オープンした『EXPO '70パビリオン』がそれ。ずっと気になっていたんですが、先日ようやく観に行くことができました。
Expo70pavilion
 鉄鋼館には以前から万博関連の資料をちょこちょこ展示してあったような気がしますが、薄暗くカビ臭い雰囲気だったので、これまで足を向けたことはほとんどありませんでした。新装オープンとなった今でも、玄関側(上の写真)はそれなりに小綺麗ですが、ぐるっと一周してみるとコンクリート壁が一部崩れてたり、廃墟っぽさはそのままです。
Pavilion2

 70年当時の展示品だろう鉄パイプの打楽器(?)といくつかのパビリオン模型が置いてある1Fは入場無料で、新設された2Fの展示室が200円(中学生以下無料)。トイレが1Fしかないというので先に立ち寄ったら、となりの物置(?)がガラス張りで、照明もない暗い中にマネキンが雑然と立っていてなんだか怖かった。これらも当時のモノなんでしょうね。ということは今後もときどき展示品の入れ替えなんかがあるのかな。
Pavilion3(※この写真はかなり明るく撮れてます)
 
 1970年からちょうど40年。40年という時間が長いのか短いのか、当時の人たちが夢見ていた「未来」の残滓が、この記念館に集められているのでしょう。
 

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 ところで、むかしこのブログでもちらっと紹介したことがありますが、愛知万博のタイミングに合わせて、大阪万博の公式記録映画が相次いでDVD化されたことがあります。あれでおしまいかと思ってたら、なんと今年になって新たに「開催準備編」と「施設・運営編」が初ソフト化。以前の4枚組DVD-BOXもあらたに5枚組となって再発売されました。これにはちょっとびっくり。ひょっとしてまだ秘蔵の未公開モノがあるのかな。50周年あたりにもナニか出てくるかもしれません。
Banpakudvds 鉄鋼館1Fロビーで記念撮影。写真左端から時計回りに『公式長編記録映画 日本万国博/1971年作品/ジェネオンエンタテインメント/GNBD-1101/2005年5月発売』、『公式記録映画 日本万国博DVD-BOX/1971年作品/ジェネオンエンタテインメント/GNBD-1131/2006年3月発売』、『a Life of EXPO Document 2004.3.28/2004年作品/a LIFE of EXPO実行委員会/品番等記載なし』、『公式記録映画 日本万国博《40周年記念》SPECIAL DVD/1971年作品/ジェネオン・ユニバーサル・エンタテインメント/GNBD-1561/2010年3月発売』…なんだかんだでいつの間にか万博DVDが増えたなあ。あたくし、とくに万博好きってわけでもないはずだったんですが。

 上の写真のうち、右端の『a Life of EXPO』だけが異色ですが、これは2003年のエキスポタワー解体を受けて、当時万博記念ビルに入っていたインターメディウム研究所(現・IMI/グローバル映像大学)が開催したシンポジウムの記録映像。エキスポタワー設計者の建築家菊竹清訓氏を招いてのトークセッションがまるごと収録されてます。現在の眼から「日本万国博とはなんだったのか」を語っていて、これはこれで興味深い内容です。
 
 1971年に製作されたいくつもの「公式記録映画」群は、いずれも当時の熱気を伝えていてたいへん面白いのですが、中でも今回発売された(2011年3月までの期間限定生産だそうで)SPECIAL DVDがとても興味深い。
 「開催準備編」「施設・運営編」ともに観客目線ではなく主催者サイドからの記録映像なんですが、とくに第一部の「開催準備編」が目を惹きます。というのも、会場全体の起工式、立柱祭にはじまって主要各パビリオンの起工式における神事が、わずか35分ほどの記録映画のなかにくり返しくり返し紹介されるんですね。
 なかに「ヘリコプターに乗って空からお祓いする神主さん」という印象的な映像があるんですが、これは当時でも珍奇な、いかにもNIPPONを象徴するシーンと判断されたのでしょうか。劇場で一般公開された長編映画版の冒頭にも使われてます。
 こういった神事を粛々と行うことこそ、博覧会準備のためのもっとも重要な仕事だった…とは言い過ぎでしょうが、少なくとも、この手の行事を公式映像の中にきちんと記録しておかねばならぬ、という意識が強くはたらいていたのは間違いなさそうです。ていうか、記録するのが当たり前だろう、という。
 ともかく、高度成長時代の象徴として語られる万国博の内面には、広大な千里丘陵を潰してイベント会場に造りかえてしまうことへの「畏れ」が、抜きがたく存在していたのでしょう。こののち日本が経済大国へ成長するにしたがい、そんな畏れの意識も次第に薄れていくことになりますが(直接的には、政教分離の原則に反するという理由でこの種の式典から宗教色を抜き去ったことがいちばん大きいんでしょうけど)。
 
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Expomark
 『EXPO '70パビリオン』の展示はどれも楽しく、面白いものでした。これで200円は安いんじゃないかな。鉄鋼館ホールの中も覗けますが(でも暗い)けっこう狭い。現在の目で見ると、音楽ホールとしてはかなりしょぼい感じです。また、公式ガイドブックなんかが山積みになってディスプレイされてましたが、意外にたくさん残っているものなんですねえ。オリジナルじゃなくても、復刻版とかでもそれなりに売れるんじゃないかしらん。
Guidebook そういえば数年前、記念スタンプ帖だったかが印刷会社の倉庫から大量に見つかったので試しに売ってみたら、マニアが争って買っていったというハナシを聞いたことがあります。実は最近も「立体カラー写真」なるお土産品がどこぞの倉庫から見つかったらしく、売店でひっそり売られてました。万博の入場料大人800円なのにこの立体写真セットは1000円。盛大に売れ残ったんでしょうかねえ。40年後の現在、それを2000円で販売してました。売店のオバチャンの話をそのまま信じるならば、コレが見つかったのはまだほんのひと月ほど前なんだそうで。高いのか安いのか判断しかねますが、いずれにせよ現品限りの早い者勝ちでしょうからマニアの方はお早めに(^_^)。3dbanpaku でも、立体写真がたった18枚しかついていないのはいかにも少ない。せめて30枚くらいは欲しいところ。
 
 
 
 さて、日本万国博は1970年9月閉幕。施設は一部を残して解体あるいは移設、会場跡地は公園として再整備されることになります。敷地の一部は「可能な限り」自然な生態系の森を再生することが当初から決まっていたようで、そのマスタープランも展示してあります。
MasterprogramMasterplan 「マスター・プログラム」にはいちおう2004年までの年号が入っていますが、実質2000年以降は空白。人間が想定できる範囲なんてたかだか30年くらい、ということなのでしょうか。じっさい、当初の計画に基づいて植栽を行ったものの、木々が生長してみるとどうも「自立した自然の森」とはほど遠い生態系になりつつあるというので、そのあたりをなんとかするべく新しい研究や試みも進行しているそうです(→独立行政法人 日本万国博覧会記念機構/動画一覧/自然の森再生の取り組み)。そんな細やかなメンテナンスのおかげで、会場西側部分は今ではすっかり自然公園に変貌しています。ちょうど10年前の2000年には空中散策路や展望台も整備され、森の向こうに太陽の塔を望むファンタスティックな光景が気軽に楽しめるようになりました。もしも万博がなければ、この敷地内もとっくの昔に住宅街になっていたでしょう。「万博のおかげで山が削られた」から「万博のおかげで緑がいっぱい」へ。なんだか面白いものです。
Expomori
 この区域は月の石が話題だったアメリカ館やドイツ館、オーストラリア館などの人気外国館や企業館(富士グループ・パビリオン、住友童話館、東芝IHI館、サントリー館、みどり館、日立グループ館などなど)があったところ。森の中を歩いていると不意に記念碑に出くわしたりして、びっくりします。
Americakan いちど人間の手で切り開いた自然をふたたび人間の手によって自然に帰そうとする試みは、現在も関係者の手によって絶え間なく続けられています。その意味では、日本万国博覧会は今なお終わってはいないのかもしれません。

 * * *

 帰り際、ふと思いついて40年後の未来とツーショット。
With_ipad ワイヤレス電話やタッチペンで操作するコンピューターなんかは、すでに会場内で実演されていたんですけどね。
 
 
 
【おまけ】
 6月20日に万博公園内で開催されるイベント「北欧の音楽ピクニック」のチラシがあったので貰ってきました。ついでに写真もぱちり。背景はもちろん、スカンジナビア館跡地であります。実をいうと、この場所を探すのにかなり迷いました。
Picnic01
Picnic02 イベントに行かれる方はちょっと「お参り」してみてはいかが。もっとも、コンサート会場からはかなり離れところにありますが。
 

2010 06 01 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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