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ラージャスターン・ルーツ
7月31日の兵庫県立芸術文化センター公演を観に行ってきました。
会場で貰ったパンフレットによれば、<ラージャスターン・ルーツ>とは2006年にラージャスターンの州都ジャイブルで活動を開始した音楽者集団とのこと。ミュージシャンやダンサー200人あまりが参加している、ということなので、まあ要するに「静岡茶」やら「松阪牛」やら「札幌ラーメン」みたいな、地場産業的ご当地ブランド的観光物産品的営業品目なんだろうと思います。で、200名も楽士が集まって、みんながみんな揃って同じ音楽をやってるかというと、当然それぞれ指向も違うだろうしキャリアもさまざまだろうし。
じっさい、上に引用したプロモーションビデオと今回の来日公演とでは、内容がかなり違うんですね。もしもわたしが先に上のビデオを観てから会場に足を運んでいたら、ハナシが違うカネ返せと言って、大騒ぎしていたかもしれません。
けれど、じゃあまったく違うのか、180°違うのかというと、さあそれはどうなんでしょ。
今回来日したのは、その200名余りの「参加者」の中から男性6名、女性4名の計10名。うち女性3名はダンス専門、ひとりはうたとダンス。男性陣は演奏とうたで出ずっぱりでした。プロモビデオと違って使用楽器も伝統的ないわゆる民族楽器(ただし、ドータラーという、ブズーキくらいのサイズの撥絃楽器は、ギターアンプにつないでエレキ化したものを使用)オンリー。プロモビデオに映っているサキソフォンやドラムセットの入る余地はどこにもありません。ダンサーの衣装も同じで、きらびやかないわゆる民族衣装——こういうのをみるにつけ、どこまでが“伝統”でどこからが“近代的想像力の産物”なのかよくわからないのですが——を何種類も身に纏って、目にも鮮やか。
6名の男性ミュージシャンのうち、いちばん目立っていたのはモールチャング(口琴)カルタール(カスタネット)バパング(一弦打楽器)そしてうた、と八面六臂の活躍ぶりだったクトラ・カーンさん。それぞれの楽器でソロ演奏を披露していましたが、どれも凄いのなんの。なかでもアクロバティックなカスタネットさばきは息を呑んで見守っていました。第二部冒頭の口琴ソロもとてもユニークなもので、ヴォイスパーカッション(最近はヒューマンビートボックスって言うんでしたっけ)と口琴を組み合わせたような、非常にモダンなパフォーマンスだったのが印象的。そういえば、うたのいくつかはきれいなハーモニーのついたアレンジになっていて、そこだけ西洋音楽風だなあと思って聴いていたんですが(だいたい独唱が基本だと思っていたので)、あれも「モダン」の部分なのかな?
ダンスのパートもふくめて、彼らのプレイは基本的に大道芸や放浪芸の流れを汲むパフォーマンスなので、誰にでもとっつきやすいものです。MCはほとんどなし、前半はややおとなしめではじまって、後半にゆくにつれどんどん盛り上がっていってもう少し観たい! と思う瞬間でおしまい、というステージ構成もお見事でした。欲を言えば、楽器やうたの内容については少々解説が入った方がよりわかりやすくなるんだろうなあとは感じましたが、そのへんは今日(8月1日)みんぱくでやってる研究公演だったら日本人研究者の方のお話がたっぷり聞けるんでしょうね。抽選に当たった方がうらやましい(今回もけっこうな倍率だったそうで)。
ラージャスターン・ルーツがまた来るとしたら、今度は全く別のスタイルのパフォーマンスになるんでしょうか。プロモビデオを見ていると、いろいろ想像がふくらみます。ふところの広さというか、底知れぬ奥の深さというか。なんでもありのようでいて、それでもやっぱりどれもラージャスターンなんだぜ、というあたりが彼らの最大の魅力なんでしょう、きっと。
この次は炎天下の大阪城公園あたりの野外ステージで観てみたいなあ。きっとビールがうまいにちがいないっ。
Rajasthan Roots 公式サイト
2010 08 01 [face the music] | permalink Tweet
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