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LA NZAROTE - Una Rosa
昨年、マリア・パヘスのことをなんとか記事にしようと苦心していた時期に、何度も繰り返し観ていたのが上のYou Tube動画。「LANZAROTE - Una Rosa」というタイトルのダンス作品で、昨年6月に亡くなったポルトガルのノーベル賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴ JOSÉ SARAMAGO の朗読をイントロダクションに、マリア・パヘスのソロが濃厚に味わえる動画です。同カップリングで別バージョンのものもYou Tubeにアップされていますが、わたしは断然こちらが好き。
わたしはここで歌っている歌手やギタリストの名前も知らなければサラマーゴの著作すら読んだことがなく、そもそもこのセッションがどういう経緯で収録されたものかもわからないので(テレビ番組の企画とかなんでしょうかねぇ)、したがって紹介者としては全くふさわしくないんですけど、予備知識とかなにも無くてもやはり魅入ってしまうわけでして。
このビデオ、その作家自身の朗読も味があるし男女ふたりのヴォーカルも素敵なんですが、わたしとしてはやはり踊り手ばかりに目が行ってしまう。
マリア・パヘスは「背中で語れるひと」だと常々思っているんですね。この動画でも彼女はしばしばカメラに対して背を向けています。しかしその後ろ姿がたいへんドラマティックであり、エロティックでもあり。身体の隅々まで、ふつうの人なら意識の届きにくい背面までもがみごとにダンス表現の一部となっていて、なるほどこのひとは実に完璧に「全身是ダンサー」なんだなあと、つくづく感じます。それほど長くもない曲だし、画質だってそれほど良くもない動画なんですが、そんな中にでも、マリア・パヘスの魅力はぎっしり詰まっている。知的で、気品があって、色気があって、ダイナミックな迫力もあって、繊細な情感もあって。そんなさまざまな要素がここでは自然に溶けあっていて、だから何度観てもまったく飽きません。
それと、この動画でわたしが好きなのは、演奏が終わったあとにそれぞれ堅く抱擁し合っているシーンが入っているところ。とりたててどうと言うこともない部分なのかもしれませんが、この動画の中でこれがあるのとないのとでは大違いでしょう。観終わって、なんだかぽかぽかと幸せな気分になってくるのであります。
2011 01 24 [dance around] | permalink Tweet
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comments
はじめまして、私は大学でダンスの研究をしているものです。実際に踊ることもあります。特にコンテンポラリーダンスに非常に興味があります。バレエや民族舞踊にも関心があります。ツイッターでとんがりやまさんをフォローさせてもらっています。ダンスに関する造詣が深そうなのでコメントを書かせてもらいます。
最近とんがりやまさんが「ダンスバイブル」や「ダンスは国家と踊る」という面白そうな本を紹介されていたので、他にもなにかオススメのものがあれば教えてもらいたいなと思います。
このサイトで紹介されている「ダンスクリティーク」は読むつもりです。今私の身近にある本としては「世界のダンス〜民族の踊り、その歴史と文化〜」「モダンダンスの歴史」「ダンスの20世紀」「カニングハム 動き・リズム・空間」「コンテンポラリーダンス徹底ガイド」「アリス川畑文子物語」「どうせダンスなんか観ないんだろ」です。「バレエ・リュス その魅力のすべて」も読む予定にしています。
他になにか面白い本があれば、是非とも教えてくださいお願いします。ところで「ダンスは国家と踊る」はどうでしたでしょうか?感想が聞きたいです。
posted: moo (2011/01/31 22:35:40)
はじめまして。コメントありがとうございます。ツイッターの方も、どうもありがとうございます。
このブログで取り上げたダンス論関係では、石井達朗『アクロバットとダンス』(青弓社、1999)小林正佳『舞踊論の視角』(青弓社、2004)などがありますが、その他ですと三浦雅士さんのいくつかの著作(『身体の零度』講談社選書メチエ、1994、『考える身体』NTT出版、1999、『バレエの現代』文藝春秋、1995)などはいかがでしょうか。石井さんの『身体の臨界点』(青弓社、2006)も、民俗舞踊からコンテンポラリーまで話題が豊富なので楽しかったです。
『ダンスは国家と踊る』(慶應義塾大学出版会、2010)は、フランスのコンテンポラリー・ダンスの事情をよくご存じなら理解しやすいかもしれません。わたしは第一部、第二部あたりまではふむふむとうなづきながら読み進めていったんですが、中盤以降は脱落しそうになりました(^-^;)。ただ、訳者の松澤さんが巻末に附けてくれた「二十世紀ダンスのショート・ヒストリー」と、同じく巻末のダンス年表はとても参考になりました。
まあしかし、乗越さんも言っておられますが、ダンス本を読むよりも「ダンスの現場」に実際に立ちあうコトの方がよほど重要だとは思います。わたしも、今年はなるべくたくさんナマのステージを観ておきたいなぁと思ってはいるんですけどねぇ…。
posted: とんがりやま (2011/01/31 23:58:15)
返事ありがとうございます。教えていただいた文献は参考にさせていただきます。少し調べてみただけでは、「身体の零度」「身体の臨界点」がおもしろそうでした。読んでみたいと思います。
そうですねえ、おっしゃる通りダンスは生のステージを観るのが一番ですね。ダンスに興味を持ってからできるだけ公演を観たり、実際に踊ったりしています。初めて観たのはベジャールバレエ団のベジャール追悼公演だったかなー。。。先日は初めて舞踏というものを観ました。
ところで、来月四日に「ダンスは国家と踊る」の著者アニエス・イズリーヌさんが日本大学芸術学部江古田キャンパスで講演するようです。私は遠くて聞きにいけなくて残念ですがね。
posted: moo (2011/02/01 0:53:57)