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ラグース2011
11月26日の愛知県芸術劇場から12月17日の新宿文化センターまで、計13会場で行われる今年の『ラグース』。一昨年以来4度目の来日公演です。わたしは27日のSAYAKAホール(大阪狭山市、上写真)公演を観てきました。ここ数日急に寒くなっていたんですが、この日は幸いにも比較的暖かく、また天気もよかったのでバイクで片道約2時間のツーリングも兼ねて、のんびりお出かけ。
ラグースには2006年の初来日以来、2007年、2009年と毎回足を運んでいるんですが、過去3回ともカラー写真豊富で豪華なプログラムを販売していたのに、今回はモノクロ二つ折りのリーフレットのみ(販売じゃなく全員に配布)。また、この日は空席も目立ち、ざっと見たところホールのほぼ半分くらいしか埋まらなかったような。ちょっと寂しい気もしましたが、拍手や手拍子はとても盛んで、意外にかけ声もたくさん飛んでいて、けっこう盛り上がったのはなにより。ラグースの客層はいつも少し年齢層高めだと思うんですが、この日も同じで、いかにもアイリッシュ好きな若者よりも、老夫婦や家族連れの方が目立っておりました。
“大将”ファーガル・オ・マルクル率いる5名のバンド+女性シンガー1人+ダンサー14人というチーム編成はこれまでとほぼ同じ。ただし、メンバーはそれなりに入れ替わっております。ヴォーカルはヘイリー・グリフィス。プログラムに記載のプロフィールによれば2004年に『Riverdance』、2005年には『Lord of the Dance』に参加したとありますがわたしは初見(のはず、あとでビデオソフトとか確認してみなきゃ)。3曲歌いましたが「You Raise Me Up」はもうこの手のショウでの定番ナンバーだなあ。
一方ミュージシャンでは、フィドル/バウロンのファーガル・スカヒルとキーボードのキアラン・マーデリングが2009年公演から引き続き参加で、イルン・パイプスのマーティン・マコーマックとギターのコナー・スミスが初参加。
前回も元気いっぱいだったフィドルのファーガルが今回も大活躍で、特に第一部にやった彼のソロ・パートは間違いなく今回のハイライトでした。貫禄が出てきたというか押しが強くなったというか、魅せるし聴かせるし人なつこい笑顔もたっぷりで、たいへん聴き応えがありました。会場で彼の新作ソロアルバムを販売していたので迷わず購入、いまそれを聴きながら書いてますが実に達者なフィドルだなあ。これから行かれる方、これは買いですぜ。
ただ、フィドラーがバウロンも兼任するのはラグースではいつものことなんですが(そして彼のバウロンもとても面白いんですが)、やはりこのふたつはそれぞれ別の人が担当した方が、よりサウンドに厚みも出るし良いんだけどなあ。
リード・ダンサーではマイケル・パトリック・ギャラガー(2005年に『Riverdance』のプリンシパルとして来日)、ポーラ・ゴウルディングのふたりは前回と同じキャスティング。もうひと組のリード・ダンサー、ジョーイ・カマーフィールドとディアドラ・カイリーは新顔のようです。
パトリックは前回公演ではけっこう太ってしまって、ちょっとステップ踏んだだけでも肩で息をしていたように記憶してるんですが、さすがに今回はぐっとスリムになってました。リバーダンスの時でもけっこう王子様キャラというか、やんちゃなことはしないタイプだったんですが、今回も実に端正なダンス。もうちっと暴れてくれてもいいのにな、と思わぬでもないんですが、そのぶんジョーイがめいっぱい活躍してます。彼はダンス・チーム全体のリーダー役でもあるのかな、フィナーレで全員がお辞儀するときの合図(ヒールのダブルクリック)はジョーイが出してました。
それ以外の10名のダンサーは、プログラムに名前が載っていないので確認できず。何名かは前回も来ていたように思うんですが…。プログラムを簡素化するのはいいけどスタッフのクレジットはきちんと載せて欲しいものです。だって、コレオグラファーの名前さえ載ってないんだもん、ぷんぷん(たぶんいつもと同じマイケル・ライアンだと思うんですが)。
ダンサーは合計14名ですが、全員が揃うのはフィナーレのみ。オープニングでは13名だったのでてっきりこれで全部かと思ってましたが、けっこう贅沢な使い方をしてますね。
ラグースがはじまって今年で14周年とのことですが、今回の公演を観て、バンドもダンスも全体にとても引き締まって、より一体化というかショウとして洗練され、うんと完成度が高くなったと感じました。
これまで素っ気なかった背景も、スクリーンに抽象的なパターンやアイルランドの名所の絵を映したり(実写映像だったらまるきり「観光ビデオ」となるところですが)演出面にも工夫が見られます。
演目で目を惹いたのはエンディング近くに演じられた新作?の「Colito Furtuso」。ビートの効いたリズムで実にシャープなダンス・ナンバーでした。それ以外にも、というかオープニングから既にあっと思っていたんですが、いままで以上にきびきびとした動きになっていて、おお、ずいぶんレベルが上がってる、と感じました。かといってアメリカのトリニティともちょっと違う。このへんは文字にするのが難しいんですが、おそらく競技会用のダンスも含めて、こういうスタイルがいまのアイリッシュ・モダン・ステップ・ダンスのメイン・ストリームなのでしょうねえ(と、先日発売された映画『JIG』のビデオを観たときも感じましたが)。これまで『ラグース』は肩の凝らない、気の置けない仲間のような気楽なステージ・ショウという印象がありましたが、今回観たステージからは「本気出してみました」みたいな雰囲気も感じられました。そして、これはこれで“アイリッシュ・シーンの現在”を如実に表現しているのだな、ということも良く伝わってきました。
思い返せば『ラグース』はそのスタート当初から、<アイルランドの現在>を等身大で表現しているステージでした。とすれば、今年の公演にも<2011年のアイルランド>がそこかしこに息づいていると言っていいでしょう。そんなにしょっちゅう彼の地に遊びに行けない身としては、これからも、2年おきでも3年おきでもいいから、末永く彼らのステージを日本で楽しめたらと願ってやみません。大将、また来てね!
2011 11 27 [dance around] | permalink
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