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シルヴィ・ギエム2011

 
Guillem_2011
●東京バレエ団/Sylvie Guillem on Stage HOPE JAPAN TOUR
 兵庫公演;2011年11月05日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
 
 3・11を受けて、シルヴィ・ギエムがパリで「HOPE JAPAN」というチャリティ・ガラを開催したのは4月6日。それから半年を経て、10月からギエムの日本ツアーが行われています。今回は東京を皮切りに、岩手と福島を含む9会場での公演。わたしはそのうちの兵庫公演を観てきました。以下、覚え書き。
 
【第一部】
・白の組曲
 セルジュ・リファールが振り付けた、1943年初演の作品。ギエムは出ず、東京バレエ団のみで演じられます。黒一色のシンプルなセットに白いチュチュがまぶしく、リファールの整然とした幾何学的な振付も楽しい。バレエを“物語”から解放するというコンセプトは、たぶん当時としてはそれなりに斬新だったはずですが、今の目で見るとクラシック・バレエのイディオムでしか動けない振付というのはかなり窮屈のように思いました。音楽が印象的で、ところどころオリエンタル風というかヨーロッパではない不思議な感じで、調べてみるとエドゥアール・ラロが作曲したこの音楽はもともと「ナムーナ」という、ギリシャ・イオニア海に浮かぶ島を舞台にしたバレエ作品なんだとか。納得。

【第二部】
・ルナ
 ギエムのソロ。振付はベジャールで、音楽はバッハ。セットもなにもない舞台の上で、白いコスチュームのギエムがただひとり屹立、しかしその存在感はさすがと言うほかありません。おそろしくキレがよく自在に動く身体は、これが40代半ば(ギエムは1965年生まれ)の身体かと思うほど若々しく、もうそれだけでも感嘆に値しますねえ。
 
・チェロのための5つのプレリュード
 同じくベジャール×バッハですが、「ルナ」と全く違ってコミカルな作品でした。出演は東京バレエ団から吉岡美佳さんと高橋竜太さん。
 チェロ弾き(高橋さん)とバレリーナ(吉岡さん)のすれ違いというかドタバタというか、うんと近くにいるのに全くコミュニケーションが取れないふたりという設定は、いかにもベジャールっぽいなあ。チェロ弾きが楽器しか見えておらず、隣でバレリーナがさかんにアピールしてるのに彼の方は楽器を愛撫してるばかり。これって草食系男子ってんでしょうかね。高橋さんの身体の動きはバレエ・ダンサーとはちょっと違うなあと思ってパンフレットを見たら、中学・高校時代は体操選手だった由。あ、なるほどねえ。
 
・Two
 ギエムのソロ。暗い舞台の中央に、畳半畳ほどの正方形のスポットライトがあたり、彼女はそのスペースから一歩も出ることなく踊ります。


 貼り付けた動画は上述の、パリ・シャンゼリゼ劇場でのチャリティ・ガラ「HOPE JAPAN」公演の時のもの。ただ、わたしが観たステージではライティングが非常に効果的に使われておりました。中盤以降、ドラムスが鳴り響くあたりから、腕や脚の動きに合わせて手先・つま先から青や赤や黄色の光が放たれ、残像効果を伴ってとても美しかったんですね。最初は手の中にLED照明器具でも持って踊っているのかなと思いましたが、どうやらそうではなく、動きに合わせて照明をピンポイントに当てていたようです。プログラムには振付家のラッセル・マリファントの名前の次に照明デザイナーとしてマイケル・ハルズの名前がクレジットされており、ダンサーと照明と音楽の3つのどれもが密接に絡み合っている作品でした。終盤のめくるめく光の輝きに、ちょっとだけロイ・フラー(→YouTube)を連想してみたり。
 
【第三部】
・ボレロ
 今回の公演の目玉であります。ギエムは2005年に「この作品はもう踊らない」と宣言したんですが、07年に死去したベジャールの追悼公演のために一度、そして今回、2度目の“封印”を解きました。
 ボレロをナマで観るのは2度目で、最初に観たのはかれこれ20年以上も前だったかな。主演が誰だったかすらもう覚えてませんが、作品そのものは強烈なイメージとともにずっと残りました。今回もまた同じで、後半どんどん盛り上がっていくあたりで、何故かうっすら涙が出てしまいました。鎮魂の祈りと再生への願い——と、こうやって文字にしてしまえばありふれた言い回しになるのでしょうが——ギエムがこの作品に込めた思いが、今日の日本でこの作品を踊ることの意味が、まっすぐ伝わってきたように感じました。
 
 劇的なエンディングの直後、会場ぜんたいから嵐のような拍手、そしてスタンディング・オベーション。たぶん、ぎっしり埋まった観客のほぼ全員が立ち上がっていたんじゃないかな。何度も何度も繰り返されるカーテンコールというのも、なかなかお目にかかれない光景でした。ありがとうギエム。
 

2011 11 06 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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comments

 突然のコメントをお許しください。
 私も正にその場におりましたので、あの感動を共有できたことが嬉しいです。ギエムのTWOを何の予備知識も無く観たのですが、心臓がドキドキして手が震え、思わず涙ぐんでしまいました。舞台でこれ程心を揺さぶられたのは初めてです。
 後半の腕を回転させるところは、あたかも指先に爪先に炎が灯ったようで、残像で腕が何重にも見え・・・人間技とは思えない素晴らしさでした。

 
 

posted: mami (2011/11/07 0:50:41)




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