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ベタな、あまりにベタな物語<ストリートダンス>
●ストリートダンス/TOP OF UK
監督:マックス&ダニヤ
制作:アラン・ニブロ、ジェームズ・リチャードソン
脚本:ジェーン・イングリッシュ
2010年イギリス映画/日本公開2012年
この映画、「イギリス初のダンス映画!」という触れ込みなんだけど、かのモイラ・シアラー主演の名作『赤い靴』(1948)なんかも無視ですかああそうですか。
ま、パンフレット記載のプロダクション・ノートによれば、制作者は『フラッシュダンス』(1983)や『フットルース』(84)や『ダーティ・ダンシング』(87)、つまり80年代のハリウッド・ダンス・ムービーをやりたかったらしい。なるほど、ストーリーからしてずいぶん80年代的ではあった。80年代的というか、よく言えば王道、悪く言えばベタすぎなオハナシ。
—優勝すれば憧れのニューヨークに行ける! UKトップを目指してがんばってた、ロンドンのとあるストリート・ダンス・チーム。突然、リーダーの男が脱退してしまい、そのカノ女が新しいリーダーにさせられたもののチームは空中分解寸前。練習できる場所すらなくなり、カンパを募るためにやったスーパーマーケットでのパフォーマンスは、無許可のゲリラ行為だったため警官にまで追われる始末。それでも、ひょんなきっかけで出会ったバレエ学校のエライ先生に才能を認められ、ようやく練習場所は確保できたものの、その交換条件がとんでもないものだった。「ストリート・ダンス大会には、うちの学校のバレリーナのタマゴたちをメンバーに加えて出場させること」クラシック・バレエの世界しか知らないお上品な生徒たちにストリート・ダンスをさせろって? 大会まであと5週間、いったいワタシに何ができるっていうの…!?いうの…!?いうの…!?いうの…!?
日本では2週間限定公開ということで、慌てて出かけた地元のシネコンでは、わたしを含めて観客は4人。他の3人がどういう風に映画を鑑賞していたかはわからないけど、わたしは大スクリーンを前に終始照れっぱなしであった。80年代というけれど、あの時代の日本のいちばんベタな少女マンガですら、設定をもう少しヒネっていたんじゃないか。そういや槙村さとるのダンス漫画なんて、男女間や親子間の確執と愛憎劇のドロドロさ加減がもの凄かったよなあ…などと画面を観ながら思いだしていた。あれに比べりゃこの映画の「対立」なんてカワイイものだわ。
若いストリート・ダンサーたちへの、大人たちの無理解と迫害。でもそんな中、ひとりだけ彼女たちを理解し助けてくれる老いた先生。クラシック・バレエ組との不和から、やがて両者は協力体制に。ライバルたちとのデッドヒート、チームを脱退した元カレが実は○○だった。大会直前にチームを襲う絶体絶命の大ピンチ、そして意外などんでん返しでハッピーエンド…あうあう、オハナシがいかにもテンプレすぎるうううううううううう。
こういう筋書きには、正直まったく乗れなかった。個人的にこの手の「物語」を欲していないからではあるんだろうけど、劇映画としていえば、今さら感の漂うかなりどうでもいい作品としか思えない。
この作品の売りは、現在のイギリスのストリート・ダンス・シーンの実力派が多数出演していることにあるのだけど、わたしとしては役者の演じるありきたりなお芝居よりも、現役ダンサーたちのあるがままのドキュメンタリーの方が、むしろ観てみたかった。わたしは生来、小説とか映画とかの“フィクション”が苦手な性分なんだけど、つくりもののよりもノンフィクションの方がもっとドラマティックなことだってあるはずだと思うし、そういう“ドラマ”にならとても興味が持てるのだが。
それと、最終的に勝利を掴む主役たちのダンス・チームよりも、彼女たちを脅かすライバル・チームのダンス・パフォーマンスの方がよほど上手いと思ったが、こういうのもこの手の映画の“あるある”なんでしょうかね。主役チームは役者主体、ライバルチームは本職のダンサー集団なので、まあ、当たり前といや当たり前ではあるんだろうけど。
とはいえこの映画、本国ではそれなりにヒットしたらしく、2012年3月には続編が完成との由。パート2ではアジアから唯一、日本人ダンサーも出演するので、続編も日本公開されるのかな。クレジットによればこの映画にはBBCも出資してるそうだけど、BBCつながりで、同じダンス映画でBBC SCOTLANDが制作に噛んでいる『JIG』(2011)もいつか日本公開してくれないかなあ。あれもダンス・コンペティションに賭ける若者の物語として、かなりアツい内容なんだけどねえ。
2012 02 07 [dance around] | permalink
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