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CELTSITTOLKEレコ発ライブvol.2

 
120513
 
 関西ケルト/アイリッシュコンピレーションアルバム『CELTSITTOLKE(ケルトシットルケ)』というアルバムが発売されたのは2010年12月。約半年後の2011年5月には、神戸ソニックホールで参加ミュージシャン総参加のレコ発ライブが行われた。一夜限りの豪華な顔合わせに、もう二度とできない企画だろうなあと思っていたら、CDは第二弾が発売されるわライブまでふたたび実現してしまうわで、いやあ、ホントに夢のようですねえ。
 アイルランドはじめ他のケルト圏伝統音楽や、北欧や東欧などヨーロピアン・トラッドを演奏活動の中心に据えている日本人ミュージシャンは近年ますます増えていて、その質もどんどん上がっている。わたしがこの種のジャンルばかり聴くようになったのは1990年代からだけど、それ以前から取り組んでいる人たちはもちろんいて、「ケルトシットルケ・プロジェクト」の中心人物である吉田文夫さんもそのひとり。というか日本における草分けのひとりという方が正しいでしょう。
 このプロジェクトは、そんな吉田さんだからこそ実現した企画であることはまず間違いない。同じ関西圏といっても普段は活動拠点も違えば指向する音楽性だって違う。それぞれに一癖も二癖もあるミュージシャンたちを、これだけ見事に纏めあげられる人物は、まず他に存在しないのではなかろうか。
 コンピCDのvol.1には7バンド、vol.2にも7つのバンドとユニットが参加していて、重複している顔はほとんどいない(どころか関西にはまだまだもっと多くのミュージシャンがいる)。層が厚いだけじゃない、紡ぎ出される音楽の多種多様なことといったら。もちろん、東京をはじめ日本の各地に魅力的な演奏家がたくさんいるから、関西だけが特別すごいと主張するつもりはさらさらないんだけれども、それでも「日本を代表する実力派の面々」という風なフレーズがつい出てきてしまいそうになる。それは2枚のCDを聴くだけでもじゅうぶん感じとれるが、やはり彼ら/彼女らの真価はライブこそにあり、それを証明するのがこのレコ発ライブだ。
 
 1グループ30分ほどしか割り当てられないがそれでもたっぷり4時間。それだけの長丁場をまったく飽きさせず、それどころかどんどん盛り上がっていくライブは、ちょっと他では得られない貴重な体験だった。vol.1の時と違って今回は参加できなかったミュージシャンがいたのは残念だけど、そうでなくてもスケジュール調整だけでも至難の業だろうことは想像に難くない。じっさい、多くのバンドが自分たちのアルバムのレコーディングのまっただ中だったり、全国ツアー中だったりしているなかで、この場に駆けつけているのだから。
 
 
 今回のライブではうたがたくさん取り上げられていたのが特に印象的だった。アルバムvol.1の中でも特にわたしが好きな『シューラ・ルウ』を再びやってくれたシャナヒー+ほりおみわは他にも数曲を披露(なかでもとりわけ『マウス・ミュージック』は鳥肌ものだった)、そして行灯社、さいとうともこユニットもヴォーカルものを演奏していた。かつてはアイリッシュといっても日本人がやれるのはダンス・チューン中心のインストばかりだったけど、いつの間にかうたも積極的に演奏されるようになったんだなあ。感慨深い。
 器楽曲オンリーのグループの方も、いぶし銀のようなアイリッシュ・トラッド(松阪健&貴瀬修、グレンフィールド)から多国籍風オリジナル楽曲(鞴座)まで実に多彩だった。さらに今回はついにケルト圏から離れて、出発点がスウェーデン伝統音楽であるドレクスキップまで参加している。先日3rdアルバムを発表したばかりの元気な4人組は今回のライブのトリをつとめていた。さすがに大人気バンド、もちろん客席もここぞとばかりに大盛り上がりだった。
 
 しかし、このライブの目玉は、なんといってもラストにある。出演者全員参加のセッション大会、これに尽きるのだ。アイリッシュ・パブなどでおなじみの、セッション・チューンの定番ばかりを集めたセットが、今回はアンコールを含めて4曲もあったのが嬉しい。おそらく客席からも、それぞれ楽器を持って舞台上に飛び入り参加したかった人たちは多かったにちがいない。なにせ普段ならまず実現しない夢のセッションだからねえ。ともあれ、この大フィナーレを聴けただけでもたいへん価値のあるものだった。みなさん本当にお疲れさまでした!
 
 先にもちょっと触れたけど、関西圏だけに限ってもアイリッシュ/ケルト/トラッド系ミュージシャンはまだまだ大勢いらっしゃる。毎年なんて贅沢は言いません。CDもライブも第三弾・第四弾・第五弾…と、この先なが〜く続いてほしいものであります。
(2012年5月13日/神戸ソニックホール)
 

5/16追記:【参加ミュージシャン・スタッフのブログ記事など】

Pipers Caffe/原口さん→http://piperscaffe.org/main/?p=10918
シャナヒーさん→http://shanachie.exblog.jp/18292786/
ほりおみわさん→http://miwaneilo.exblog.jp/15303820/
鞴座/藤井さん→http://hujisawasachie.doorblog.jp/archives/51909049.html
行灯社さん→http://andonsha.exblog.jp/18288390/

神戸電子専門学校さん→http://www.kobedenshi.ac.jp/blog/sound/2012/05/celtsittolke.html
Ustreamアーカイブ→http://www.ustream.tv/discovery/recorded/all?q=CELTSITTOLKE
 

2012 05 14 [face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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