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化(けちょう)鳥

 
Kyoka_memorial
 この連休を利用して、金沢の泉鏡花記念館に行ってきました。京都在住のイラストレーター、中川学さんが鏡花の『化鳥』を絵本化。それを記念して、今その原画展が同館で開催されているのです(平成24年12月16日まで 会期が延長になったようです。平成25年1月20日まで)。
 
 中川さんと泉鏡花という組み合わせは、昨年夏に自費出版として制作された『龍潭譚(りゅうたんだん)』につづく2作目となります(わたしの感想はこちら)。
 前作がかなり艶やかというか妖しい雰囲気たっぷりだったので、今回はどういう本になるのかな、と、たいへん楽しみにしていました。実は原作はこれまで読んだことがなく、青空文庫に入っているのは知ってたんですがあらかじめ予習しておこうとも思わず、とにかくまずは中川さんの絵とともに味わおうと。今回出版された絵本も、泉鏡花の誕生日にあわせ11月4日に発売されてはいたんですが、どうせなら泉鏡花記念館で購入しようと。ということで、この日まで内容はまったく知ろうとしないまま、記念館に足を運びました。
  原画展はすでに9月からはじまっていて、二度の展示替えが済み、わたしが訪れたのは最後の第三期。物語のクライマックスが展開されている場面たちが並んでいます。
 
 
 
 前作にくらべてとても明朗で、すっきりとした画面だなあというのが第一印象。おそらくは鏡花の原作のもつ雰囲気に合わせてのことだろう、絵のタッチをがらりと変えているようだ。けれどもじっくり眺めているうちに、ああ、やはりいつもの中川さんだ…
 …というのも、どんな場面でも、どこかに気持ちがざわざわと蠢いてくるような「怖い」感触を残しているんですね。一見どんなに明るく楽しげなシーンでも、実はその裏に言い知れぬ不気味さが潜んでいるという。そんな、一筋縄ではいなかい奥行きの深さこそが、中川さんの絵の最大の魅力でもあるんですが。
 
 彼の場合、誰にでもわかりやすい「怖い存在」を描くときは、むしろうんと可愛く描く。『化鳥』でいうと前半の百鬼夜行図なんかがそう。妖怪を描くのは中川さんにとっては十八番でもあって、たいへん楽しんで描いているのが実によくわかります。で、上でいう「怖い」感触はもっとさりげない場面にあって、たとえば物語のクライマックス、主人公の少年が鳥になるビジュアルとその次のページ。ここには思わず背筋がぞぞっとしました。あー、ここでゴッホが出てくるか!
 …って、本書を見たことのない方にはなんのことやらさっぱりわからん感想文で申し訳ないですが、なにせこれは絵本なので、その絵の凄さはぜひ各自で直接お確かめくださいまし。『龍潭譚』ではまだ直接的だった<この世ならぬ存在>の表現が、本作ではうんと屈折したかたちで、かつさりげなく表現されていて、怖いモノ見たさではないけれど、そこのところを確かめたくて、ひととおり読み終わってもまた最初のページから見直したくなります。

 本書は絵本という形式なので子供にも読めるよう、鏡花の原文そのままではなく一部抜粋、漢字表記をかなりかな書きにし、かつ総ルビにするというふうに、読みやすいよう随所に工夫が施されていますが、子供がひとりで読んだら、この絵物語はきっと心のどこかにいつまでも残っていくだろうなあ。本書はそんなふうな、何度でも繰り返し読み返したくなる一冊に仕上がっていると思います。
 
 
Kyoka 記念館の前庭に鏡花親子の銅像が建ってたので、絵本と一緒に(こっそり)記念撮影。
 
Kecho
●絵本 化鳥
 文:泉鏡花
 絵:中川学
 監修:東雅夫
 装丁:泉屋宏樹
 題字:上田晋
 企画編集:泉鏡花記念館
 発行:国書刊行会/2012年11月4日初版/ISBN978-4-336-05544-6
 

2012 11 25 [booklearning] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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