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CELTSITTOLKEのライブアルバム
●CELTSITTOLKE LIVE てんこもりJAM/V.A.
BSGM1240 2012年12月
Jacket Design:Fumi(beatshop)
制作:GLEN MUSIC 発売:ビートショップ
関西のアイリッシュ・トラッド系ミュージシャンたちによるコンピレーション・アルバム『CELTSITTOLKE(ケルト知っとるけ?)』シリーズの最新作。
同シリーズのこれまでの2枚はスタジオ録音盤なのだが、発売のたびに参加ミュージシャンが集まって内容盛りだくさん(まさにてんこ盛り!)のライブが行われた。ちなみに初回が2011年5月11日、2回目は2012年5月13日。いずれも神戸市のソニックホールで開催(2回目のライブでのわたしの感想は→こちら)。
今回発売されたこのCDには、過去2回のライブ音源から選りすぐられた全13曲が収められていて、2010年からはじまった本プロジェクトの中間決算、とでもいうべき内容だ。
* * *
オリジナル・アルバム未収録の、ライブでしか聴けなかった演奏がいくつか入っているのは嬉しい限り。たとえばいきなりの一曲目、MacFiddlesの〈Mouth Music Set〉から「ああそうそう、これが聴きたかったんだ!」とテンションがあがった。マウスミュージック好きとしてはShanachie+ほりおみわさんの方が入っていないのはちと残念ではあるけれど、いやもうこの1曲目が聴けただけでもあたしゃ満足です(なお、ライブ盤のみ収録のヴォーカルものは、他に行灯社〈Spancil Hill〉とShanachie+ほりおみわ〈She Moved Through the Fair〉が入っている。こちらも絶品)。
全ての出演バンドが万遍なく収録されているわけではない(約半数だ)のは惜しまれるけど、実はこのアルバムの白眉はラストの4曲、出演者総登場の大セッション大会にある。詰まるところ本作は、これら大セッションを記録として残しておきたいがために作られたCDだとして過言ではないと思う。
各自がふだん所属しているバンドのメンバーとしてではなく、個人として、ひとりの音楽家として参加するセッション。関西を中心に活躍する総勢約40名のミュージシャンたちが、同時に合奏するのは今回がはじめてだとしても、ふだんはアイリッシュ・パブや毎年夏に行われる高島町アイリッシュ・ミュージック・キャンプなど、それぞれが地元のどこかしらで出会っているはずであり、長年にわたって多種多彩な音楽体験を共有してきたことだろう。
であるなら——今さらあえてローカル色をうんぬんする必要はないのかもしれないけれど——あのライブ会場で奏でられていたリズムやノリは、やはり「関西の」アイリッシュ・ミュージック・シーンを端的に特徴づけているものと言っていいのではないか。
このセッションを聴いていると、アイルランドの各地方やヨーロッパやアメリカ、あるいは日本国内の他の都市で毎日のように演じられている「アイリッシュ・ミュージック・セッション」と、ケルトシットルケがどう違ってどう同じなのか、つい比較してみたくなる。世界がグローバル化の名のもとに非常に狭くなって久しいいま、それでも固有の地域性や独自性がそこに発見できるのかどうか。ライブ会場の熱気を懐かしく思い出しながら、ふとそんなことを考えた。
4曲のセッションはそれぞれ〈YOTTE-TACATTE Jigs 寄ってたかってジグ〉、〈Dai-Sun-Gen Reels 大三元リール〉、〈TENCOMOLI Reels てんこ盛りリール〉、〈Min-Na-De Polka みんなでポルカ〉と名付けられ、パブセッションの定番チューンが次々に繰り出される。CDプレーヤーでボリューム高めで聴いているうちに、あのときの雰囲気がどんどん甦ってくる。わたしも客席で夢中になって手拍子していたなあ。主宰の吉田さんをはじめ、出演者のみんなの楽しそうな笑顔があらためて甦る。
* * *
本シリーズ、本筋のコンピレーション盤は現在vol.3の完成に向けて進行中ときく。もちろんそちらも待ち遠しいけど、あわせてレコ発ライブもきっと行われることだろう。一夜限りの夢のセッションにまた逢えるかと思うと、いまからわくわくした気分を抑えることができない。
2012 12 24 [face the music] | permalink
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