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若きラファエロの肖像

 
Raffello
●ラファエロ展
 2013年03月02日〜06月02日 国立西洋美術館
 
 「ラファエロ」って、その昔は「ラファエッロ」とか「ラファエロ」とか表記していたように記憶しているのだけど、いまは「ラファエロ」なのか。「ルネサンス」と「ルネッサンス」はいまだにどちらも使うかな。こういうのって、現地の発音的にはどのへんが近いんでしょ。
 
 …それはともかく、初の生ラファエロ。おそらくもう二度と日本には来ないんじゃないかと言われているし、同時期に開催中の『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』(東京都美術館)やもうすぐ来る予定の『ミケランジェロ展』(2013年6月28日から福井県立美術館、9月6日から国立西洋美術館)とあわせて、なにやらにわかにルネサンスブームである。イタリアじゃないけど、これまた奇跡の来日と評判の『貴婦人と一角獣』(国立新美術館/7月27日から国立国際美術館)も同時代なんだし、一緒に混ぜてあげてもいいかもしんない。
 
 『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』や『貴婦人と一角獣展』では、さすがに歴史の重みというか深みを感じて、神妙な顔つきで腕を組みながら会場を歩いたが、ラファエロは事前に想像していたよりも「楽しかった」。なんというか、この絵を描いたのがざっくり500年ほども昔の人、とは思えなかったのだ。
 わたしがいちばん時間をかけたのは、場内にはいって最初に展示されている<自画像>。上の写真は会場のチケット売り場ヨコの壁面で、当然ながら実物よりもかなり拡大されている。チケットを買うためここに並んでいたけど、その時は別に何も感じなかったのだ。しかしいざ実物に相対したらうーむと唸って、そのまま一歩も動けなくなってしまった。団体さんらしき集団が続々入ってくるので、いつまでも立ち止まっているわけにもいかない。ゆっくりと他の展示を眺め、少し人が減ったころを見計らって、また入り口に戻ってきた。壁にもたれながら、この自画像にしばらく見入っていた。
 
 何がそんなに面白かったんだろう? どこに興味を惹かれたんだろう? 実は会場にいたときも帰宅した今も、よくわかってない。本展のもうひとつの目玉である<大公の聖母>はわりとあっさり通り過ぎたというのに(あの聖母像、ラファエロの時代からずっとのちに背景を黒く塗りつぶされたというのにはびっくりしたけど)。
 
 
 この若き自画像は、署名がないので本人作ではない可能性もあり得るのだそうだけど、さまざまな検証/分析を通じてラファエロ自身が描いたものとみてほぼ間違いないとのこと。もし別人だったらそれはそれで大ニュースだろう。1506年頃の作と見られていて、<大公の聖母>とほぼ同時期。かれは1483年生まれだから単純に引き算すると23。前後に少し幅をもたせても、20台前半の青年の顔、ということでいいだろう。
 
 こんなヤツなら現代でもいそうじゃん、と、まず最初に思った。これは、シンプルな黒い帽子と黒いシャツを身につけていることも大きいだろう。もしも時代がかった服装だったらここまでこの絵に食いつかなかったかもしれない。
 イケメンである。首が長く、なで肩っぽいのが目を惹く。スポーツなんかは不得手だろうが、しかし相当に賢そうだ。おだやかで大人しめの顔つきなんだが、一方でもの凄くプライドが高そうでもある。ラファエロは温和な性格で協調性にも富み、人望が厚かったといわれているようだが、この絵のなかの青年はどことなく他人を見下しているようにも見える。ま、才気煥発な青年期ならではの表情とでも言おうか、もっとも、わたしは天才美少年に生まれてこなかったので、そういう人の心理というものはよくわからないけど。
 
 このひとの描く絵は、他の肖像画でもそうなんだけど、全体的になんともいえない品がある。それでいてどこか対象をクールに突き放して観察しているようにも思える。どの絵を観ても「そうそう、こんな感じのひと、今でもいるよね」と思えるのは、モデルの個性がそれぞれに感じ取れるからだろう。生きている感じ、それをあるいは色気と言ってもいいかもしれない。
 会場にはラファエロ以外の作者の作品も多く展示されているのだけど、作品ヨコの解説プレートを見なくても、ラファエロ作かそうでないかがほとんど分かってしまう。ホントにすごい画家だったんだなあと、出口を抜けるころには今さらながらではあるけれど、つくづく感心していた。ラファエロにしろその周辺の画家にしろ、これまで美術全集や画集で何度か見たことがあったはずだけど、やはり美術館で実物を前にするとぜんぜん違う。いいものを観た、という満足感いっぱいで会場をあとにした。
 

2013 05 26 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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