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国宝 大神社展

 
 入り口の看板を眺めていて、ふと「国宝」の後に「!」を付けたら「特報!」みたいでカッコイイかも!と思った。
 でも「国宝!大神社テン!」って書くと、急になんだかなあ感がたっぷり出てきて、ちょっとヤかも!とも思った。
 
Jinja
●国宝 大神社展
 2013年04月09日~06月02日 東京国立博物館 平成館
 2014年01月15日~03月09日 九州国立博物館
 ※展覧会公式サイト
 
 本展は伊勢神宮の第62回式年遷宮の関連事業として企画されたものだという。ということは、次回同じような展覧会が開催されるのは20年後になるんだろうか。この次はぜひ近畿エリアでも開催してくれたら嬉しいな。その頃まで生きてるかどうかは分からないけど。
 
 
 場内に入ったら、展示品よりなにより、まず内装が白を基調とした明るいつくりだったのが印象的。国宝や重要文化財を数多く紹介する展覧会というから、もっと重々しく黒っぽい内装を予想していたのだ。もちろん、想像通りの黒基調の内装も後の部屋に出てくるのだが、清浄感というか聖域感というか、神社的世界観で「白」というのはきっと重要な意味を持つんだろう。だからこそ、いちばん最初の部屋には白を使ったんじゃないだろうかと想像する。
 
 第1章「古神宝」や第2章「祀りのはじまり」あたりはどちらかというとお勉強モードで、実物を見るより解説パネルを読む時間の方が長かった。ガラスケースの前の人だかりがなかなか進まないので、後ろの方から首を伸ばして展示品をちらっとのぞき込むだけで、どんどん先へ行く。なので、何が展示してあったか、正直あまり記憶がない。
 なんだか地味だなあ。でもまあこんなものか。仏教美術には派手なのもあるけど、神道はどっちかというと質素というかシンプル志向だよね…などと思っていたら、第3章「神社の風景」あたりからがぜん面白くなってきた。<那智山宮曼荼羅>(和歌山・熊野那智大社)や<賀茂別雷神社境内絵図>(京都・上賀茂神社と呼ぶ方がなじみがありますな)のように、参拝したことのある神社の案内図なんかにはやはり親近感が涌いてくるし、第4章「祭りのにぎわい」では狩野内膳筆の<豊国祭礼図屛風>(京都・豊国神社)の特に左隻、みんなで輪になってダンスしている場面には釘付けになった。ちょっと話はそれるけど、こういう屏風絵や絵巻物などの、踊りの場面だけを抽出して特集してる雑誌や画集はないのかな。「日本の中世のダンス・シーン」を専門に研究している方はどこかにいそうなものだけど。
 第5章「伝世の名品」では<北野天神縁起絵巻>(京都・北野天満宮)もよかったけど、このコーナーではやはり刀剣かなあ。こういう奉納された刀はいちども使用されたことはないのだろうけど、異様な迫力がある。そういえばこのまえ観た「ボストン美術館展」は、大阪会場では刀剣類が展示からきれいさっぱり外されていたのが残念だったな…などと思い出す。
 
 しかし、いちばん面白かったのはなんといっても最後の第6章「神々の姿」。神像がいっぱい並べられていて、ここまでヒトの姿カタチが少なめだった展覧会が急ににぎやかになった気がして、なんだかホッとする。
 ディスプレイもなかなか凝っている。2体の<随身立像>(岡山・高野神社)にそれぞれ複数のスポットライトが当たっているな、と思いながらそのコーナーを抜け、次の部屋に入ってから振り向くと、さきの立像の影がぼんやりと写し出されている。おお、高松次郎だ。立像の後ろにあった壁は、壁ではなく実は半透明のスクリーンだったというわけ。
 別のコーナーに<僧形八幡神影向図>(京都・仁和寺)という一幅の絵が展示されている。神様のお姿を直接描かず、室内空間に浮かぶ影のようにぼんやりと表現するという、いっぷう変わった絵だ。画面左がわにエライお坊様がすっくと立ち、右下には時の権力者か高級官僚のような出で立ちの男がふたり、ひれ伏している。両者の中間の少し上空に、ぼんやりとした影が金色の絵の具で描かれている。神秘体験を素直に絵にしたらこうなった、という感じの構図(ちなみに13世紀、鎌倉時代の作という)だが、先のディスプレイは、まさにこの絵を実際に再現したかのような感じだった。ライティングの妙で、こちらが少し動くだけで影が大きく動く。いやあ、面白い面白い。
 さすがにその場にひれ伏しこそしなかったけど(警備員がすっ飛んでくるだろうし)、そのかわり前後左右にうろうろして、この仕掛けをしばらく楽しませてもらった。
 
* * * 
 
 それにしても、最近の展覧会には「音声ガイド」と「記念グッズ」は当たり前に存在してますね。わたし一度も音声ガイドなるものを利用したことがないんだけど、あれってどうなんでしょ。有名な俳優やらアナウンサーやらの起用も売りのひとつになってるみたいだけど、絵を見るのにべつにいい声のナレーションやBGMなんか不要だと思うんだけどなあ。
 グッズの方はといえば、ここんところの主流はクリアファイルで、かつてのポストカードの座をおびやかしつつあるようだ(ていうか昔は絵はがきかミニ複製画くらいしかなかったし)。実際、どこのミュージアムショップに行ってもいちばん目立つところに置いてあるから、かなりの売れ筋商品と推測される。みなさんそんなに整理したい書類にお困りなのかしら。
 とりあえず図録を買って、さて他に神社らしいグッズはあるのかなと思って売り場を一周したところ、「ジンジャー飴」や「ジンジャークッキー」があって面食らった。おいおい神社もダジャレかよ…と顔を上げたら、そこに追い打ちをかけるかのように「神社エール」というラベルのついた瓶ががが。
 はい、負けました。ていうかフツーにショウガたっぷりで美味しそうに見えたので、思わず1本買い求めてしまいましたよ。ただいま冷蔵庫で冷やしております(温めても美味しいらしいが)。この週末にでも開けてみるつもり。
 

2013 05 30 | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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