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ミケランジェロ展

 
Michelangelo
●ミケランジェロ展 天才の軌跡
 2013年06月28日〜08月25日 福井県立美術館
 2013年09月06日〜11月17日 国立西洋美術館
 
 なんでも今年は<日本におけるイタリア2013>だそうで、本展の開催もその記念事業のひとつ(といっても他にどんなイヴェントがあるのか知りませんが)。美術展では「ラファエロ展」(3月2日〜6月2日・国立西洋美術館、わたしの感想は→こちら)と「レオナルド・ダ・ヴィンチ展 天才の肖像」(4月23日〜6月30日、東京都美術館)が既に終了。イタリア・ルネサンスの三大巨頭が相次いで紹介されるのは、こういう機会でもないとなかなか難しいんだろうなあ。
 もっとも、ラファエロとダ・ヴィンチはいずれも東京だけの展示で終わり、他の地域に住んでいる者にとっては<イタリア年>といわれても全く実感がない。唯一、このミケランジェロだけは福井でも開催ということで、福井展の宣伝チラシにはでっかく「この夏・・・福井に奇跡が起きる!」というコピーが踊っている。
 
* * *

 ダ・ヴィンチにしろミケランジェロにしろ、名前はとにかく有名だし滅多に企画展など開かれないしで、その話題性だけで足を運んでしまうのだけど、実際に展示されているモノはといえば素描や手稿が大半を占めていて、展覧会そのものとしては地味になりがちだ(その点、ラファエロ展はかなり華やかだった)。実際、レオナルド・ダ・ヴィンチ展の感想はわたしも書きあぐねたまま、放ったらかしになっている。いや、けして悪くはなかったんですけどね。ダ・ヴィンチは画家という以上に科学者というか発明家というか、工学や軍事学など多方面にわたる才能を見せていることもあって、どうにもちゃんとした感想が書きにくかったり。
 ミケランジェロの場合、このひとの本業は彫刻家だと思うんだけど、まさか「ダヴィデ像」を日本まで運び込むわけにもいかないだろうし、もちろん壁画や天井画も動かせない。なので、展示品が地味になるのは、ま、しょうがない。実際、上の看板写真でもわかるように、アイキャッチになっている画像は素描作品「レダの頭部習作(1530年頃)」だ。レダは女性だが、この素描のモデルは男性で、当時は女性像でも男性モデルをもとにするのが慣習となっていたんだとか。へええ。
 
 
 本展は「システィーナ礼拝堂500年祭記念」と銘打たれていて、展示はその天井画ならびに壁画「最後の審判」が主題となっている。なので「彫刻家・ミケランジェロ」という側面は前面には出てこない。せめて写真展示でもいいので「ピエタ」や「ダヴィデ」も観たかった気もするが、まあ、システィーナ礼拝堂が主題じゃあねえ。
 
 で、その天井画。薄い布地にプリントされたものが会場入り口のアプローチ部分上部に飾られ、会場内では解説パネル(それぞれ聖書のどの場面を描いたものかの説明)と関連する習作の素描、そして複製版画をテーブルに仕立て上げた19世紀半ばの工芸品を展示している。
 天井画よりも見応えがあったのが「最後の審判」で、こちらもカラー写真パネルの展示だが、原寸大ではないにせよそこそこ大きなパネルで、けっこう迫力があって、楽しめた。他に、各パートを忠実に模写した銅版画シリーズ(ジョルジョ・ギージという人の作で、1540年代頃の作品)が並べられ、複雑なこの巨大壁画を読み解く手助けとなっている。
 
 ミケランジェロの描く人体は大きく身体をねじるポーズが多いのが特徴だが、「最後の審判」はさらに<3D>で、画面手前から奥にかけて強いパースをつけて横たわるポーズが随所に見られ、それが異様な浮遊感と迫力を生んでいる。こういう描き方ができるのは人体を常に立体的に捉えることができるからで、さすがは彫刻家というべきだろう。それと、描かれる裸体像がみな逞しく(イマドキ風にいえば「ふとましい」か)重量感があり、それが画面のドラマティックさをさらに強調しているのだろう。ミケランジェロに比べるとラファエロの人物画はより優雅で女性的だったし、一方ダ・ヴィンチの方は科学者らしい正確さを指向していたように感じる。三者三様、図録をとっかえひっかえしてあれこれ見較べるのも楽しい。
 
* * * 
 
 本展の目玉作品はもうひとつあって、かれが15歳のころ作った大理石のレリーフ「階段の聖母(1490年頃)」という作品。日本公開はもちろん、長期間の貸し出しも初めてなんだそうだ。門外不出、とかなんとかいう惹句がどこかに書いてあった気がする。
 会場ではこのレリーフは、最後のコーナーつまり出口の直前に飾られている。その斜め後ろには、最晩年の作とされる木彫りの「キリストの磔刑(1563年頃)」が置かれている。
 作家の回顧展で処女作と絶筆が取り上げられる場合、たいていは会場の最初と最後に展示されていて、もしも両者を見較べたかったら会場の端から端を行ったり来たりするのに忙しいのだが、本展では親切なことに同じコーナーにあるのだ。これはちょっと嬉しかった。
 両者を交互に観ていると、ミケランジェロは終生「人間の身体」に関心を持ち続けていたのだなというのがよくわかる。かれは時の権力者に重用されながらも、人付き合いは避け質素な生活をこのんでいたそうで(手紙がいくつも展示されてるが、その書きぶりはいかにも律儀で生真面目そうに見える)、現代風にいえば、ミケランジェロは<この道ひとすじの頑固職人>だったんだろう。
 

2013 07 07 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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