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柳宗悦展

 
Yanagi
●柳宗悦展 —暮らしへの眼差し—
 東京展 2011年09月15日〜09月26日 松屋銀座8階イベントスクエア
 横浜展 2011年10月22日〜12月04日 そごう美術館
 大阪展 2012年01月07日〜02月29日 大阪歴史博物館
 鳥取展 2012年04月07日〜05月20日 鳥取県立博物館
 広島展 2012年05月29日〜07月08日 奥田元宗・小由女美術館
 長野展 2013年04月20日〜08月09日 松本市美術館
 滋賀展 2013年10月12日〜11月24日 滋賀県立近代美術館
 
 2011年秋から断続的に全国各地を巡回している本展、じつはわたしは2012年の大阪展に足を運んでいる。その時買い求めた図録には松本と滋賀は記載されていなかった。あとから急遽決まったのか、あるいは当時の図録制作時にはまだ日程など詳細が詰められていなかったのか。というか、まさか大阪で観たのと同じものが今ごろになってまた滋賀に来るとは考えてもいなかったのでびっくりだ。「宗悦は前も観たけどまた違う内容なんだろう」と思ってたら会場に入った途端に見覚えのある展示品が出てきて、それでようやく合点がいった次第。ま、以前ブログに書いた記事(今年行った展覧会・2012)にも本展のことはうっかり書き漏らしていたくらいで、今回改めて新鮮な面持ちで展示を楽しんだんだからいいんだけど。それに、滋賀展だけ大津絵がいくつか特別出品されてもいたし。
 
 * * *
 
 わたしが「民芸調」と言われてすぐに頭に浮かぶのは近所の蕎麦屋か居酒屋の内装だったりする。ひとつの完成されたスタイル、それもちょっと重苦しかったり野暮ったかったりする様式としてしかイメージできないが、1925年に宗悦たちが新語として「民藝」なるタームを使い始めた頃は、それは全く新しい「美の体系」だったに違いない。展覧会前半は、そんな「民藝」という概念が誕生するまでに宗悦が出会ったさまざまな<無名の人の手による工芸品>を紹介してゆく。
 展示されている品々は、いずれも柳宗悦の眼鏡にかなった“逸品”ばかり。当然、同じような日常雑器でも彼の心を捉えなかったモノは多いはずだが(というかむしろそちらの方がはるかに多いはずだが)その違いは、いったいどこにあったんだろう。わたしたちがみてもそれは歴然とした差があるものなのか、意外にそうでもないのか。たとえば旅行先で地元の窯の陶器市などがあればふらっと覗くことがあって、そういうときにわたしがモノを選ぶ基準は「家で使えるか使えないか」の一点だけなんだけど、少なくとも宗悦はそんな単純な視点でモノの優劣を決めてはいなかったはずだ。だとすれば彼のモノサシはどこらへんにあったんだろう。彼の美意識の基準点はどこなんだろう。そんなことを考えながら、展示品を眺めていった。
 
 そういえば<民藝運動>に先行して、イギリスではウィリアム・モリスの<アーツ・アンド・クラフツ運動>があった。モリスと宗悦との違いはなんだろう。会場にいるあいだ、そんなこともとりとめもなく考えていた。モリスは自身が作家でもあったから、<工業製品ではない、草の根の手工芸>という鉱脈を最終的には自分の作品として昇華させた。対して柳宗悦はみずからはなにも作らなかった。紹介者として、キュレーターに徹することによって、鉱脈を鉱脈のまま広く世間に知らしめた。両者の違いはそこらへんだろうか。だとすれば、なるほどこの両者の差はけっこう大きいに違いない。
 とはいえ、モリスがデザインした布地や壁紙のパターンが「モリス風」として今なお親しまれているのと同様、「民藝」もまた「民芸調」としてそこいらの蕎麦屋や居酒屋の内装を今なお強く支配している。今やどちらも、日常生活を彩るデザイン様式として消費されているのだ。一般家庭でもモダンな北欧製テーブルの上にモリス柄のテーブルクロスが敷かれ、そこに素朴な色調の、地方のナントカ窯で焼かれた厚ぼったい大皿が置かれる、なんて光景はごくあたりまえのものとなっているだろう。インテリアを全部北欧で揃えました、とか家中まるごとミッド・センチュリーで統一してます、とかいうチカラの入ったマニアックぶりも悪くないけど、多様なテイストを適度にチョイスし、自己流にアレンジする方がより一般的なんじゃなかろうか。そういう観点で言えば、いわゆる「民藝ふう」ってどれもけっこうアクが強く主張しすぎという印象があって、使いどころが難しい気もするんだけど。
 
 
 その意味で、展覧会の最終章に柳宗理を取り上げているのは興味深い。本展が巡回中の2011年に亡くなった宗理は宗悦の長男で、父が開いた日本民藝館の第三代館長を30年間つとめた。いわずとしれた世界的なプロダクト・デザイナーでもある。展覧会は、宗理の民藝館での仕事を中心に、彼がデザインしたカトラリーなどのプロダクト製品も展示している。宗悦が生涯をかけて追い求めた「無名の工芸品」の精神を「アノニマス・デザイン」と読み替え(宗理いわく「民藝もアノニマス・デザインの一種である」)、<手工芸ではない、大量生産が可能な工業製品>を生み出した宗理の仕事がよくわかる構成になっていたと思う。
 

2013 11 04 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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