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色彩とリズム—パツォウスカー/シャノン

 
Sharonshannon●シャロン・シャノン
 2013年12月08日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
 
 シャロン・シャノンの前回の来日は2003年ということだけど、さてわたし的にはいつ以来だったかな。ひょっとすると1996年の初来日以来だったかも…日記とかメモとかをつける習慣がないもので、過去のことはどんどん忘れてしまうんですね。そんなこともあって、2004年暮れから備忘録がわりにこのウェブログをはじめたんだけれども、そういやこちらも10周年となるのか。ブログをいつまで続けられるか、先のコトはわかりませんが、出かけたコンサートや展覧会のことはせいぜい書き残すようにしておかなきゃ。
 
 
 備忘録と言うことで、今回の公演は予告チラシとはメンバーが少し替わっていたので、まずはそのメモから。
■来日メンバー
シャロン・シャノン(アコーディオン)
ジム・マレイ(ギター)
デジー・ドネリー(フィドル)
ジャック・マハー(ギター、ヴォーカル)
 予定ではフィドルとビート・ボックスでショーン・リーガンがアナウンスされていたんだけど、デジー・ドネリーに替わっている。彼のフィドルは第一部ではおとなしめだったんだけど後半で盛り返してくれました。ショーンもいつかまた観たいなあ。あ、ついでながら、シャロン・シャノンはアコーディオンだけでなく、第一部で1曲だけホイッスルもプレイ(曲目は<Rathlin Island>…だったはず)してました。
 今年の目玉として、スペシャル・ゲストにフィドル/ダンスでステファニー・カドマンが待望の初来日。じつはわたくし、シャロン・シャノン以上に彼女のダンスが楽しみだったんですね。ちょうど2年前の2011年12月に、オタワ・ヴァレイ・ステップダンスのピラツキ兄弟を擁する『STEPCREW』公演を観た時の感想文に、彼女のソロ・ダンスを紹介しております→(こちら)。まさかそのカドマン本人のダンスがこの眼で拝める日が来ようとは。
 ステファニー・カドマンは、あらかじめ想像していたよりも小柄で華奢だったのが印象的だったけど、ダンスはどれも楽しかった。あたしゃピラツキ兄弟よりもこちらの方が好みであります。彼女は第一部でフィドルソロとダンスを1曲ずつ、第二部でフット・ステップとダンス、アンコールでもフィドル&ダンスを披露して大活躍、もう大満足でした。残念ながら終演後のサイン会ではシャロン・シャノンに比べ並ぶ人が極端に少なく、ちょっと寂しそうではありましたが…。
 
 * * * 
 
 話は少し変わって、以下はごく私的な体験のメモ。
 実は、わたしはびわ湖ホールに向かう前に、京都駅ビルの伊勢丹百貨店内にあるギャラリー「美術館「えき」」で、チェコの絵本作家クヴィエタ・パツォウスカーの展覧会を観ていた。
●クヴィエタ・パツォウスカーとチェコの絵本展
 2013年12月06日〜27日 美術館「えき」KYOTO
 
 もちろんジャンルもキャリアもまったく異なるふたりではあるんだけれども(あえて共通する要素をあげればふたりとも女性である)、たまたま同日に体験したということもあってか、どこか似た匂いを感じたのだ。こじつけ、と言ってしまえばそれまでなんだけど、鮮やかな色彩とコントラストの効いたリズム感、それがクヴィエタ・パツォウスカーとシャロン・シャノンの両者に共通する特徴のように思えたのだ。
 たとえばパツォウスカーにはあの「赤色」がある。赤と、そのコントラストとしての白や緑など、ただでさえ鮮やかなその色彩をより強く見せる配色のセンスは彼女の独壇場といっていい。
 
Couleursdujour●COULEURS DU JOUR 日々のいろ(2010年)
 展示作品(原画の一部が飾られていた)でもあり、かつ販売もされていた彼女の代表作の一つ。一般的な本の形態のように見えて、その正体は全長10メートルにも及ぶ「折りたたまれた紙(つまり綴じられていない)」で、さらにページによってはくり抜かれたり飛び出したりという、複雑な仕掛けも仕込まれている。見開き毎の関連性はないように見えて、色や形が連想ゲームのようにつながっているから、くりかえし眺めていてもまったく見飽きない。どのページ、どの面を開いてもパツォウスカーならではの個性が鮮烈に主張されているのがまず凄いが、抽象画とも具象画ともとれる画面を順に見ていくと、なにやらストーリィめいたナニモノかが感じられるのが面白い。もちろんパツォウスカーは一冊の本としての全体像を綿密に考えて構成しているだろうから当たり前といや当たり前なんだけれども、その構成力というか彼女独特のリズム感が、眺めていてたいへん心地いいのだ。本のカタチを借りた一個の宇宙ともいうべきオブジェとなっているのが素晴らしい。この人は1928年生まれなんだけど、この作品から発せられるエネルギッシュで柔軟な若々しさといったらどうだ。
 
 エネルギッシュなリズム感といえば、シャロン・シャノンのもつそれも、かなり独特のものがある。今回のライブでは、アコースティック・ギター担当のジム・マレイがハイポジションで刻むカッティングが特に耳に残っているんだけれども、そのめったやたらにアクセントの効いたリズム感はもとよりシャロン自身の体質、体臭ともいうべきものだ(彼はシャロン・シャノンのサポートメンバーとして10年以上共演しているんじゃなかったかな)。華やかでダンサブル、トリッキーなまでにシンコペーションを強調する彼女ならではのリズムは、本来は「芸術劇場」だとか「ホール」だとか名付けられた静的な空間にはそぐわない。お上品に椅子に座って聴いているのがもどかしいくらい、身体をうずうずさせる刺激的な麻薬のような効果を持っているのだ(ざっとわたしが見渡した限りでは小さい子供連れの家族もいたけれど、それ以上にご高齢の方が目に付いたコンサートだった。びわ湖ホール側でつけたのだろう、本公演には「大人の楽しみ方15 アイルランド/アコーディオン」という副題があったので、朴訥ないわゆる「アイルランド民謡の夕べ」を期待して来られた方もそれなりに多かったのではないかと想像する)。
 
 鮮やかな色彩感覚とトリッキーなリズム感、そしてなによりワン・アンド・オンリーのオリジナリティ。クヴィエタ・パツォウスカーとシャロン・シャノンには思いもよらぬ共通点があった。いや、たまたまわたしが同じ日に体験したというだけなので、この感想を他の誰かに共感してもらえるとはまったく思ってはいないのだけれども、個人的にはなんだかとても目の覚めるような一日だった。
 

2013 12 09 [design conscious, face the music] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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