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熊川哲也『ロミオとジュリエット』
●熊川哲也 Kバレエカンパニー<15周年記念公演>ロミオとジュリエット
2014年6月11日から7月5日にかけて、東京・松山・大阪・名古屋・富山・鹿児島の6都市で計15回公演。あ、ひょっとして15周年とかけた公演回数なんでしょうか。わたしは6月21日の、大阪フェスティバルホールでの公演を観てきました。
個人的には新生フェスティバルホールでの鑑賞は2度目で、前回(ニューヨーク・シティ・バレエ団、わたしの感想は→こちら)は1階席だったので、今度はあえて3階席を取ってみたんですね。いざ座ってみると想像以上に高く、オーケストラ・ピットの明かりに照らされて舞台が中空に浮かんでいるかのような、ちょっと不思議な感覚が。『ロミオとジュリエット』はバルコニーのシーンに象徴されるように、舞台の高さを生かした演出が特徴でもあるんですけど、うーん、その<高さ>効果は上から見下ろすのにはやや不向きかもしれないと思ったり。次にこのホールに来るときは2階席を買ってみようかな。
原作がシェイクスピアの戯曲なので、演者がセリフをいっさい発しないバレエ版だとストーリィの細かな部分が良く分からなかったりするんですが、まあそこは『ロミジュリ』、誰もが知ってる物語という前提で舞台は進んでいきます。ただ、この公演、大道具というか基本のセットが1種類で、それを組み替えたり照明の当て具合を工夫してなんとか場面の違いを出そうとしていた…その意図は伝わったんですけどね、それでもやはりわかりにくかった。このあたりの舞台演出は、2010年にびわ湖ホールで観たアナニアシヴィリ&グルジア国立バレエ団公演(感想は→こちら)や、翌年のナターリヤ・オーシポワがジュリエットを演じたアメリカン・バレエ・シアター公演(感想は→こちら)の方に軍配が上がります。
恋の喜びや敵対者への憎しみ、愛しい人を失う悲しみなどなど、さまざまな感情が過剰なほどたっぷり盛り込まれる舞台。演者にとってはダンスの技術のみならず演技力がなければ成立しない物語です。わたしがいた席では、演者の細かな表情は肉眼ではほとんどわからない、けれども演技の核心は客席の隅々にまできちんと届いていたようです。というのも、3階席のちょうど真ん中あたりに座っていたわたしのうしろの席で、第2幕の後半からずっと、すすり泣く女性の声が聞こえていたんです。すすり泣きはやがて、ジュリエットが毒薬を飲み倒れ込むあたりで号泣に変わり、以後その方は終幕までずっと泣きっぱなし。よほど心の琴線に触れたのでしょう。
バレエ『ロミオとジュリエット』は、ダンスそれ自体以上に、役柄の演じ方に見どころがあります。わたしが観たステージのカーテンコールでもっとも拍手が大きかったのは乳母を演じた前田真由子さんだったと思いますが、そういう「脇役」の演技が光ってこそ、主役の悲劇が際立つもの。そのあたりはカンパニーとしての腕の見せ所でもありましょう。そういう意味では、ロミオを演じた熊川哲也さんとジュリエット役のロベルタ・マルケスさんの見事さは言わずもがな、脇を固めたダンサーたちの演技がいろいろと印象に残った公演でした。
2014 06 22 [dance around] | permalink
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