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YYSB2014『展覧会の絵』『新世界より』
●山下洋輔スペシャルビッグバンドコンサート2014
滋賀公演:2014年06月28日 びわ湖ホール 大ホール
ごく個人的な話なんですが、山下洋輔のライブというと野外のイメージがあります。随分昔に京都のお寺でソロピアノを聴いたときとか(えーと、どこの寺だったっけ)、同じく京都の円山音楽堂でニューヨーク・トリオを聴いたときとか、今だに記憶に残っている演奏シーンというと、わたしの場合はなぜかたいてい野外での会場なんですね。暗くて狭いライブハウスとか、一般的なコンサートホールでもたくさん聴いてきたはずなんですが、なんで野外の方が強く印象に残っているんだろ?
* * *
山下JAZZはソロやトリオでの演奏だとライブはもちろんCDも好きでいろいろ聴いていたんですが、そういえばオーケストラとの共演やオリジナル・ビッグバンドはあまり聴いてなかったな、と思っていたちょうどいいタイミングで、山下洋輔スペシャルビッグバンドのライブが滋賀に来るというので、いそいそと前売りチケットを入手。いざ会場に着いたら1階の前から5番目のど真ん中という、たいへん贅沢な座席で思い切り堪能できました。
会場に着いてほぼ埋まった客席をぐるっと見渡してみると、杖をついたよろよろ歩きの老夫婦から小学生くらいの子供を連れた家族まで、たいへん幅広い客層(びわ湖ホールが用意したアンケート用紙が、片面が大人用で、もう片面が中学生以下の子供用となっていたのにも驚きました)。演し物がクラシック音楽でもポピュラーなムソルグスキー『展覧会の絵』とドヴォルザーク『交響曲第9番』なので、老若男女誰にでもとっつきやすいのがいいんでしょうね。演奏の方はゴキゲンなスイングを演っていたかと思うと次の瞬間にはゴリゴリのフリーになり…という具合にネコの目のように変幻自在にスタイルが変わってゆくんですが、それでも観客席が置いてきぼりにされることはなく、それぞれキメのところでかけ声や拍手が盛大に起こっていたのも印象的。スイングからモダン、フリーに至るまで、スタイルに関係なく楽しめるくらいジャズの認知度ってのは高いんだなあ。
またまた個人的な話なんですが、コンサート前日は早朝から夜遅くまでドタバタしてまして、当日も朝から仕事をみっちりやって大急ぎで会場に駆けつけと、どっちかというとゆっくり音楽を楽しむという精神状態ではなかったんですが、そういうわたしでも冒頭すぐにすっと身体が軽くなったのがびっくり。ああ、やっぱジャズっていいな、音楽って楽しいな、ってことをつくづく実感したコンサートでありました。
今回の圧巻はやはり第二部の『新世界より』でしょうね。バンドメンバーによるソロパートはどれも凄かったし、<遠き山に日は落ちて>で有名な、あのメランコリックなメロディをはじめとする誰もがよく知るフレーズが、おおそう来るか! とスリリングなアレンジで次々と繰り出されるのはたいへん楽しい。山下御大はソロピアノとみせかけてドラム/ベースとのセッションの方が時間が長く、やはりこの人は「トリオ」という形式(それも結成25年以上にもなるNYトリオのあの編成)がもっとも性に合っているんだなあと再認識。
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で、冒頭の個人的感想に戻るんですが、このビッグバンド・スタイルもいつか機会があれば野外ライブで観てみたいな。管楽器ががんがん鳴り響くバンドはとことんゴージャスだしいかにもジャズの神髄っぽくて大好きなんで、だからこそ晴天の暑い空の下、生ビールを飲りながらぐでんぐでんに酔っぱらいつつ聴いてみたいもの。いや、びわ湖ホールもいい会場だし、第二部開始前にはちゃんとアルコールも販売してたんですがね(あっというまに売り切れてましたが)。
(写真:上/びわ湖ホール公演のチラシ 下右/最新作CD『山下洋輔スペシャルビッグバンド 展覧会の絵/ボレロ』2012年サントリーホール(ライブ録音)ジャムライス 2014年 JACD-1401 下左/CD特典でもらったメンバーサイン集)
2014 06 29 [face the music] | permalink
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