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祝・トリニティ来日10周年

 
Trinity2014
●トリニティ・アイリッシュ・ダンス Japan Tour 2014
 7月15日 四日市市文化会館 第1ホール
 7月18日〜20日 Bunkamuraオーチャードホール
 7月21日 愛知県芸術劇場 大ホール
 7月24日 アクロス福岡
 7月26日 三原市芸術文化センターポポロ
 7月27日 静岡市清水文化会館マリナート
 7月29日 ニトリ文化ホール
 
【写真:公演プログラム】
 編集・発行 株式会社テンポプリモ
 デザイン 武田祐輔+中山絵美子(タエラグラフィックス)
 
 …それにしてもトリニティは関西に来ないなあ。今回のツアーでいうと自宅からもっとも近いのは四日市か名古屋なんですが、他の用事もあったので7月19日の東京公演を観に行くことにしました。豪雨の影響で往復とも新幹線のダイヤが大きく乱れたんですが、幸いにもわたしの乗った便は何事もなく。
 
 * * *
 
 今回のツアー、目玉はなんと言ってもサンディ・シルヴァのゲスト出演でしょう。ケヴィン・バークのOPEN HOUSE時代を含め、彼女のダンスはビデオやYou Tubeなどで何度も観ていたんですが、実物は今回がはじめて。昨年のシャロン・シャノン公演に帯同したステファニー・カドマンといい、長年観たかったダンサーが日本に居ながらにして観られるというのはホント嬉しい限りです。

 トリニティのメンバーによる派手なオープニングのあと、暗く落ちた舞台をサンディがひとり登場。彼女の代名詞でもある“ボディ・パーカッション”のソロがはじまります。You Tubeからの映像をご紹介。まったく同じではないですが、だいたいこういった感じのダンスです。

 いやもうゾクゾクしますねえ。
 こういう具合に、彼女はただ単なるゲストダンサーとしてソロを2〜3曲踊る程度だろう(ちょうど2013年のラグースにゲスト出演したエマ・オサリバンみたいに)などとタカをくくっていたんですが、トリニティはそんな甘い予想をがらっと覆してくれました。
 そういやもともと彼らもボディ・パーカッションはレパートリィに取り入れていたんだっけ…と、これはあとから思い出したんですが、サンディの振付による演目が今回新作として演じられ、しかも第一部のラストを飾るという重要なポジションに配されていたのが驚き。
 〈コミュニオン〉というタイトルのそのナンバーは、ダンサーたちがアカペラで唄いながらボディをぱちぱち叩くという面白い趣向から始まります。曲名はえーとなんだっけ、確かむかしタナヒル・ウィーバーズあたりが演っていたような…いまちょっとCDが行方不明なんで曖昧ですけど、いわゆる「マウス・ミュージック」か「ウォウキング・ソング」のひとつ。最初は少人数で、徐々にダンサーが増えていき、どーんと派手になって終わるかと思いきや最後はまたしっとり静かに終わるという構成で、第一部終了! となるとたいていド派手に締めくくることが多いこの手のステージではかなり異色のエンディングだったのが印象的でした。
 
 
 ダンサー自らがマウス・ミュージックを歌いながら踊る、という演目は後半の第二部でもあって、〈チェアーズ〉というナンバーではサンディを真ん中にプリンシパル・ダンサーふたりとミュージシャンたちがイスを持ち寄ってステージ真ん中に座ります。軽快なフットステップとボディ・パーカッションで、まるで会話をするようなセッションを繰り広げました。あたくし、こういう気の置けないセッションふうの演出には弱いんですわ。このナンバーはもう終始笑顔で眺めておりました。
 他にも歌とダンスが同時に演じられるという演目はいくつかあって、昨年『ウーマン・オブ・アイルランド』ではたいへん驚いたんですが、このやりかたは今後増えることはあってもけして無くならないでしょうね。むしろ「なんで今まで歌をバックに踊らなかったんだ」と不思議に思うくらい。
 
 ミュージシャンは4人。ギター/ヴォーカルのブレンダン・オシェイ、ウッド・フルート/イルン・パイプスのブライアン・ホレラン。フィドルがクリーク・シュリーにバウロン/ドラムスのポール・マーシャル(12年公演では Different Drums of Ireland の一員として参加)。フィドラーはアイリッシュというよりむしろオールドタイムのひとで、特にソロ演奏の時に顕著なんですが、聴き手をぐいぐい引き込むというよりかはゆったりと誘い込む演奏でした。
 そういう音楽スタイルといい、パーカッシブなダンスといい、今回も北米産ならではの特徴をたっぷり詰めこんだトリニティですが、そのベースには競技会スタイルのアイリッシュ・ダンスがしっかり根付いているのも事実。純粋なアイリッシュ・ダンス・ショウを期待する人はちょっと違和感を覚えるかもしれないですが、おそらくは世界中でこのカンパニーにしかできないオリジナリティにあふれたステージではありました。
 
 * * *
 
 来日10周年ということで、公演プログラムには招聘元であるテンポプリモ代表の中村聡武さんの文章も載っています。2004年以降に来日したアイリッシュ・ダンス・ショウが年表でまとめられていて資料としても役立ちます(ただし13年のラグース公演がなぜか抜けてますが)。それによると、すでに2016年公演は決定しているとのこと。その後も継続的な日本公演を約束されていて、今後のカンパニーの進化がますます楽しみです。2004年の初来日からこっち毎回欠かさず観ているこちらとしても、こうなりゃとことん付き合う覚悟であります(…なのでいつか関西公演も復活してくださいな)。
 
【過去関連記事リンク】
2004年公演(伊丹)
・2006年公演の際に発売されたDVDのレビュー
2006年公演(西宮)
2010年公演(東京)
2012年公演(東京)

2014 07 23 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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