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バレエ・リュスの衣装展

 
140720●魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展
 2014年06月18日〜09月01日 国立新美術館
 
 オーストラリア国立美術館が所蔵するバレエ・リュスの舞台衣装やデザイン画、それに公演プログラムなどの関連資料を中心に、日本の美術館の所蔵品をいくつか加えて編まれた展覧会。開催告知を見たのは昨年(2013年)の後半だったかと思うんですが、その時以来、観に行ける日を指折り数えて待っていたのでした。
 
 * * *
 
 バレエ・リュスの舞台衣装が国内で展示されるのはこれが初めてという訳ではなく、わたしが知っている範囲でも1998年『ディアギレフとバレエ・リュス展』(セゾン美術館/滋賀県立近代美術館)、2007年『舞台芸術の世界展』(北海道立釧路芸術館/京都国立近代美術館/東京都庭園美術館/青森県立美術館)に次いで3度目です。ですが、ほとんど重複がないのが凄い。
 今回の展示はディアギレフのカンパニーがまだ「バレエ・リュス」と名乗る以前の1907年に、パリで上演された『アルミードの館』からはじまり、ディアギレフの死後ド・バジル大佐が旗揚げした「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」時代の舞台衣装までがおおよそ年代順に並べられていて、この伝説的バレエ団の歩みが<だいたい>つかめるように構成されています。
 
 バレエ・リュスの重要な代表作のいくつかが解説パネルで言及されるにとどまっていたり(たとえばニジンスキーの〈春の祭典〉〈遊戯〉、ニジンスカの〈結婚〉など)、あるいはまったく触れられてなかったり(たとえば振付:レオニード・マシーン/音楽:エリック・サティ/台本:ジャン・コクトー/美術:パブロ・ピカソという錚々たるメンバーで制作された〈パラード〉など)と、欲をいえばキリがないんですが、それでもこれだけの数の衣装群に囲まれてしまうと、まあいいか、という気になります。
 ただ、そうは言っても実物の展示があるものとそうでないものの差はやはり大きくて、ジャン・コクトーは導入部に大きなポスターがあるしパブロ・ピカソもプログラムの絵が展示されているとはいえ、ふたりともなんとなく扱いが小さいような(たとえば、コクトーが台本で参加した〈青神〉の衣装展示の解説パネルには、デザイナーのレオン・バクストには触れているのに台本作者コクトーへの言及は一切ない)。いっぽう、アンリ・マティスやジョルジュ・キリコあたりは自らが手がけた衣装の実物とともに大きく紹介されているので、こちらが受ける印象もより強いものになります。
 
 …他にも〈奇妙な店〉のアンドレ・ドランはあるのに〈放蕩息子〉のジョルジュ・ルオーはどうしたとか、〈牝鹿たち〉のマリー・ローランサンを出すなら〈ロミオとジュリエット〉でのマックス・エルンストとジョアン・ミロも見たかったぞとか、…いや、いろいろ言い出したらホントにキリがないんですけどね。
 さらに言えば、せっかく〈三角帽子〉と〈青列車〉のビデオ映像(パリ・オペラ座が1993年12月に再現公演した舞台のDVD。日本語盤『ピカソとダンス』ワーナー・ミュージック・ジャパン/WPBS90163)を流すなら、〈三角帽子〉でのパブロ・ピカソのデザイン画だとか〈青列車〉で使われたガブリエル・ココ・シャネルの衣装だとか(実物が無理ならせめてデザインスケッチだけでも)、そういうのも見たかったなあ…まあ、どれもただ単にオーストラリア国立美術館が所蔵していないだけ、なんでしょうけど。
 
 
 このように、<バレエ・リュスの全体像を正確に辿りたい>向きにはいささかアンバランスな展覧会ではありますが、もちろん本展ならではの新機軸もあります。中でもド・バジル大佐の「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」を美術館で詳しく展示・紹介したのはおそらく今回が初めてではないでしょうか。オーストラリアにとってみれば、ディアギレフのバレエ・リュスよりもバジル大佐のモンテカルロの方がより関係が深いというのが最大の理由でしょうが、2005年に制作されたドキュメンタリー映画『バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び』(日本語盤DVDはジェネオンエンタテインメント/GNBF-1231)——この映画はディアギレフの死から始まります——を観て以来ずっと気になっていた方面なので、ここで取り上げられたのは時期を得ていると言えるでしょう(ちなみに、会期中にこの映画の上映会もあるそうです)。
 
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 会場を抜け、カタログやポストカードをはじめ記念グッズがいっぱい販売されてるコーナーで、特にびっくりしたのがこの本。
Nendaiki●ディアギレフ・バレエ年代記1909-1929
 セルゲイ・グリゴリエフ著/薄井憲二監訳/森瑠衣子ほか訳
 平凡社 2014年07月25日初版
 ISBN978-4-582-83665-3
 装丁:廣田清子
 
 この展覧会に合わせて出版されたものでしょうか。本書はディアギレフのもとでバレエ・リュスの創設から終焉まで、舞台監督としてその全てを見届けた人物による回想録とのこと。日本語で読める文献としてはこれまでディアギレフの伝記はあったものの、バレエ・リュスそのものの本格的な<伝記本>はたぶん本書が初めてででしょう。この記事をアップしたあと、さっそく読みふけりたいと思います。
 

2014 07 21 [dance around] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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