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[DVD]:Heartbeat of Home
●Heartbeat of home ―Live From Dublin
Decca 3770155/2013年
アイリッシュ・ダンス史上に燦然と輝く『Riverdance』を生みだした、プロデューサー Moya Doherty とディレクター John McColgan のコンビが放つアイルランド発の新作ダンス・ショウです。店員さんのレコメンド付で売っていた茶屋町のタワレコ、さすがっ(輸入盤DVDですが日本のプレーヤーで問題なく視聴できます)。
公式サイト(→こちら)によれば、本作は2013年10月にダブリンで初演。以後、年末から翌年4月にかけて北京、上海、トロント、シカゴ、ボストンでワールド・プレミア・ツアーを行った由。一昔前なら日本にも来ていたんでしょうけど、今や市場として中国の方がより魅力的なんでしょうねえ(Riverdanceも2008年を最後に日本からは撤退しているし、もしかして彼らは日本がお嫌いなのかしらん)。…ま、ひょっとするといつかは来日するかもしれないので、気を長くして待つしかないかな。
DVDにはダブリン公演が収録されています。コンテンポラリー・アイリッシュ・ダンスをベースに、世界各地の民族系ダンスを融合させるというコンセプトはRiverdanceと同じなんですが、そのフュージョンぶりの高度でかつ自然なことといったら。本作の見どころは縦横無尽に繰り出されるさまざまなリズムと、音楽に負けじと目まぐるしく変化し続けるダンスにあります。
素材になっているのはRiverdanceにも登場したフラメンコと中南米のラテン・ダンス。なるほど、アレのあと制作者たちがやりたかったのはこういう世界だったのか。
音楽はBrian Byrneという人。アイリッシュ・リールがひとしきり鳴り響いたかと思えば突然タンゴになり、いつのまにかサルサに変わり、ルンバ、マンボ…ときてふたたびアイリッシュ・ジグになったり。音楽だけ聴いているとすんげーおかしいんですが、いやあこれは踊る方もそうとう大変だろうなあ。特典映像に練習風景が入ってますが、かなりハードな感じです。
アイリッシュとラテンがこれだけ雑多に取り込まれている例はちょっと他に思い浮かびません。むしろスコティッシュの方がこういう試みは多く、たとえば SALSA CELTICA あたりが最も近いかも。他にもスカのリズムに乗せてみたりファンクなアレンジで演ってみたりとか、変わりダネの部類に入りそうなCDをいくつか聴いたことがありますが、この音楽は過去のどれとも異なるように思います。まあ、あくまでショウありきで作曲されたものなんで、他と比較するのはお門違いではあるんでしょうけど。
アイリッシュ・トラッド系の楽器としてはフィドルとイリアン・パイプス、バウロン、他にホイッスルも出てきたかな。ただ、ラテン系ナンバーが多いせいもあってバンドはホーン・セクションがいちばん目立ってます。エレキベースのおねいさんがなかなかエキセントリックでよろしい。シンガーも踊り、ダンサーもパーカッションを手にパフォーマンスを繰り広げるなど(ほんの一瞬ですが日本の大太鼓まで出てきたのにはびっくり)“渾然一体”ぶりはステージ上のあらゆる面に及んでいます。とくに第二幕後半からの怒濤の展開はナマで観ていたらきっと圧倒されることでしょう。
音楽と言いダンスと言い、それぞれの要素の融合具合はRiverdanceよりもはるかに高度かつ自然で違和感はなく、老若男女あらゆる層が楽しめる内容だと思うんですが、じゃあ好みかと問われるとうーん、どうかな。
もちろん、個々の演目はそれぞれ見応えがあって面白い。特に第二幕はより現代的でリアルな演出が多くて楽しめるし、エンディングに向けてのスペクタクルな展開もエンターテインメントとして申し分ないでしょう。ただ、全体の構成がRiverdanceのそれをほぼ同じようになぞっているようで、どうしたって既視感がぬぐえないんですね。曲名もたとえば「Emigrant's Lament 移民の哀歌」であったり「World Heartbeat 世界の鼓動」であったりと、それRiverdanceでさんざんやったやん、っていう。
演目自体は随所に斬新さを見せながらも、構成や演出は王道パターンの殻の中に押し込められてしまっているような、どこかもどかしさを感じました。まあ、このへんは出演者のせいではなく、ひとえに制作サイドの問題なんでしょうが。タイトルには“FROM THE PRODUCERS OF RIVERDANCE”なるコピーが、まるで副題でもあるかのように附いてるんですけど、誕生して20年になるあのショウの呪縛からいちばん逃れられていないのが、他ならぬ制作者のおふたりなんでしょうねえ。
2014 08 16 [dance around] | permalink
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