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2014・秋の展覧会めぐり(2)

 
 ということで、後編です。
 
1409141●The Power of Images イメージの力
 2014年02月19日〜06月09日 国立新美術館
 2014年09月11日〜12月09日 国立民族学博物館
 
 みんぱく創設40周年と日本文化人類学会50周年を記念して開かれた展覧会。クロス貼りハードカバーのたいそう立派なカタログ(個人的には場所を取るのであまり好きな装丁ではないです)によれば、本展は国立新美術館のために企画されたものだそうで、大阪展はいわば里帰り公演みたいなものでしょうか。
 みんぱくの膨大なコレクションのなかから<美術館で美術作品として鑑賞する>という観点で約600点が選ばれています。地域や年代や本来の目的(生活道具であるとか、宗教用具であるとか)など既知の枠組みに縛られず、モノそのものが生みだすイメージをより純粋に味わおうとする企画意図なので、作品の横には必要最小限の情報を記すのみ。最初の方こそ「これはアジアだな」「こっちはアフリカかな」などと地域あてクイズみたいに眺めていたんですが、歩をすすめるうちにそんなことはどうでもよくなっていきました。
 
 六本木の国立新美術館には何度か行ったことがありますが、なるほどああいう建物の中にあったらさぞ引き立つだろうな、と思わせる品もいくつか。つまりはあの会場で観てこその展覧会だと言えるのでしょう。ま、かわりにこちらは隣の本館に展示場が控えており、その他の膨大な作品群にすぐ会えるっていうアドバンテージがあります(本館の展示はこまめに作品替えを行っているから何度行っても飽きが来ないのがみんぱくのいいところですね)。
 国立民族学博物館のコレクションは、数百年まえの貴重な遺物もあればついこの前作られたばかりの新しい工芸品もあるなど種々雑多。本館ではそれらをきちんと体系づけ詳しい解説とともに展示しているので、どうしても「お勉強モード」になってしまいがちです。じっさい、モノそれ自体を見るのではなく、どちらかというと解説パネルの文章を読んでる時間の方が長かったりもします。
 この特別展ではそうではなく、モノだけを観ることになるので、これはなかなかに新鮮な体験でした。
 
1409142 フラッシュこそ禁止ですが、内部は撮影OK(これは本館展示場でも同じ)。撮影禁止が少なくない日本の美術館のなかたいへんありがたい対応なんですけど、いかんせん照明が暗いのでキレイに撮ろうとするのはけっこう難しかったりもします。上の写真は比較的まともに撮れた方かな。
 
 
 展覧会は世界中の仮面をあつめたプロローグにはじまり、4つの章で構成されています。以下、目次を書き出します。
・第1章 みえないもののイメージ
 1-1 ひとをかたどる、神がみをかたどる
 1-2 時間をかたどる
・第2章 イメージの力学
 2-1 光の力、色の力
 2-2 高みとつながる
・第3章 イメージとたわむれる
・第4章 イメージの翻訳
 4-1 ハイブリッドな造形
 4-2 消費されるイメージ
  
 正直なところ、第2章以降はなんだかよくわかりませんでした。たとえば「2-1 光の力、色の力」。金銀をもっとふんだんに使った装飾品だとか、あるいはガラス素材のもの、またあるいはもっと暴力的なまでにカラフルな衣装だとか、そういう派手めのものを想像していたんですが、展示品は意外に地味。
 第3章や第4章もいまいちピンとこなくて、まあそんな章立てとは関係なく展示品を眺めているだけでじゅうぶん楽しいんですが。特に最後の「4-2 消費されるイメージ」は、古い民具を現代美術の展示のようにディスプレイしてみました、という趣向なんですが、そういうのって100年前のダダあたりで通過した<かつての現代美術>なんじゃなかろうか。まあ、こういう展示のしかたは《美術館というハコ》で観てこそ効果的なのかもしれません。このあたりが、上述した<国立新美術館のための企画>と感じた最たるものでした。
 まあ、モノそれ自体を純粋に楽しむというコンセプトのはずが、それが置かれる会場との関係性に思いを馳せることになるとは少し予想外で、それはそれで面白いものではあったんですけどね。
 
 * * *
 
 京博の新館、そしてみんぱくでの「イメージと力」展と、展示物と建築との関係性みたいなものをぼんやり意識する機会がつづけざまにあって、で、次に向かったのが稀代の名建築家・村野藤吾の回顧展。
 
1409143●特別展 村野藤吾 やわらかな建築とインテリア
 2014年09月03日〜10月13日 大阪歴史博物館
 
 本展は、大阪を拠点に活動していた村野藤吾の没後30年を機に企画されたものです。ポスターなどのメインビジュアルに選ばれたのは〈梅田吸気塔〉(1963)。彼の代表作って東京・日比谷の日生劇場をはじめ有名どころがたくさんあるはずで、大阪に限ってもいまはなき心斎橋のそごうとか、ハルカスに建て替える前の阿倍野近鉄とか、いかにも「歴史博物館」での開催にふさわしい<なつかし建築>には事欠かないでしょう。そんな中にあって、梅田の阪急百貨店前にそびえる換気施設をメインビジュアルに持って来たのは、ひとえにその造形のインパクトさ故、なんでしょうねえ。
 前衛的な抽象彫刻作品のようなフォルムは、梅田地下街のための設備であると知らなければ、単なるモニュメントにしか思えません。建築家は実用本位のこの施設に、梅田のランドマークとなるべくモニュメント性を付加させたと思うので、現代彫刻のオブジェとみられるのはむしろ意にかなったことではあるんでしょう。
 
 
 わたしは村野建築のことはほとんど何も知りません。なので、上に挙げた代表作はともかくとして、会場なかほどに掲示されていた年表を眺めて「え、あれも」「これもそうだったのか」と驚くことしきりでした。
 たとえば京都の髙島屋。品川の新高輪プリンスホテル。三重の志摩観光ホテル。難波の新歌舞伎座。吹田の関西大学、などなど。これまでそうとは知らずに足を踏み入れていた建物もいくつかあるので、いつか時間をつくってあらためてじっくりと“聖地巡礼”してみたくなりました。
 
 展覧会標題には<やわらか>というキーワードが挙げられていますが、目的に応じてさまざまな様相を見せる建築物そのものはさておくとして、彼の手がけた家具やインテリア部材は、共通して手になじむ曲線が特徴的な、たいへん繊細なもので、そこに作家特有の品の良さがあらわれていたように感じました。
 手すりやドアノブ、ソファやテーブルなど、人が直接手を触れることの多いインテリアは、自身が設計していたといいます。展示されている品々は、アール・デコ期のデザインを彷彿とさせるレトロなテイストですが、そのぶん人なつこさがたっぷり。彼の設計したビルの外観よりも心惹かれるものが多かったのが印象的でした。そんなインテリアだけを特集した展覧会もいつかやらないかな。
 

2014 09 16 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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