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2014・秋の展覧会めぐり(1)

 
 美術の秋ですね。
 
 この連休を利用して、関西の気になる展覧会をいくつか回ってきました。幸いにも天気に申し分なく、バイクで駆け回るに絶好の季節です(ゲリラ豪雨を心配しなくていい休日っていつ以来だろ)。ということで以下感想文、まずは前半戦から。
 
1409131●ホイッスラー展
 2014年09月13日~11月16日 京都国立近代美術館
 2014年12月06日~2015年03月01日 横浜美術館
 
 ホイッスラーは19世紀後半に活躍した画家。アメリカ生まれですがパリやロンドンを主な拠点にしたコスモポリタンでもありました。
 名前は知ってるけど作品はあまり観たことがないという画家はたくさんいますが、わたしにとってホイッスラーもそのひとり。ただ、彼の代表作《The Peacock Room》だけは以前スミソニアンのフリーアギャラリーを訪れた際に見ております(2007年。そのときの感想は→こちら)。さすがに実物を日本に持ってくることは不可能ですが、かわりに1コーナーを区切り、三面の壁いっぱいに映像を投影するという紹介のしかたをしております。横浜展の方ではどういう演出になるのかわかりませんが、京都展では実際の空間よりもちょっとだけ狭いかな、というくらいのスペースを使っていて、なかなか迫力のあるものでした。実際に見るよりも明るく写っているしクローズアップもあるしで、ディテールを細かく知るにはむしろこの映像紹介の方がわかりやすいでしょう。まあ、さすがに空気感というか雰囲気は、実物には到底かないませんが。
 
 日本では27年ぶりというホイッスラーの回顧展は、ただ単に作品を制作年代順に並べるのではなく、いくつかのテーマに沿って編集されています。第1章が人物画、第2章が風景画、第3章にジャポニスム(The Peacock Roomはこの章)ときて、最後に晩年の〈ノクターン・シリーズ〉が来るという流れ。
 
 端正な油彩画もいいですが、わたしが目を惹かれたのはエッチングやリトグラフなどの版画作品でした。特に〈フレンチ・セット〉(1857~58)、〈テムズ・セット〉(1859~71)のふたつのシリーズがすてき。これらは市井の人々や港湾労働者などごく日常的な風景を描いた作品ですが、すぐれたドキュメンタリー作品のように、当時の空気がリアルに伝わってくるかのよう。当時はまだカメラの黎明期、写真機が手軽に持ち運べるサイズになる直前あたりかと思うんですが、ひょっとしてホイッスラーならいいドキュメントフォトグラファーになっていたかもしれません。
 
 ジャポニスムの章では、彼が参考にしたという浮世絵がいくつか展示されていました。<参考図版>として解説パネル中の小さな写真で済ますのではなく、ちゃんと実物の浮世絵作品を並べるところがいいですね。なんというか、説得力が違います。
 ジャポニスムというと日本の着物を着て団扇をもった女性なんかがイメージしやすいんですが、そういうファッション的な小道具以上に、たとえば構図なども当時の西洋人には新鮮だったんだとか。作例として〈肌色と緑色のヴァリエーション:バルコニーのための習作〉(1864~65年)があげられてますが、こういう「欄干越しに川を眺める構図」は浮世絵には多いが西洋絵画には例が少ないと解説されています。へええ。
 
 ホイッスラー自身はなかなか強烈な個性の持ち主でもあったらしく(たとえばThe Peacock Roomはクライアントの意向を無視して勝手に暴走し、あとでギャラの支払いなどを巡って大揉めにモメたんだとか)、どっちかというとあんまりお近づきにはなりたくないヒトのような気がしますが、まあ作品と作者の人格は切り離しておくのが吉でしょう。ともあれ、いろいろと見応えのある展覧会でした。
 
* * *
 
1409132●京(みやこ)へのいざない
 2014年09月13日~11月16日 京都国立博物館
 
 や、ほんとは朝一番にこちらに向かってたんですよ、2014年9月13日の朝。9時30分開館と聞いていたので、まあせいぜい30分前に行けば余裕だろうと思って9時前に現地に着いたら、すでにうんざりするほどの行列がずらずらと。きみたちどんだけ暇やねん(と、自分のことは棚の上に上げまくりつつ)。あとで知ったんですが、先着200名に記念品が配られていたらしいですね。それでかー。
 行列っつーのがなにより嫌いなわたしは即座にその場を離れ、さっさと岡崎公園のホイッスラー展に向かい、そのあと改めて京博へ。戻ったのはお昼前で、さすがにもう大行列はなかったものの、それでも人は通常よりも多かった。上の写真は本館(明治古都館)から眺めた新館(平成知新館)です。高さは低く抑えられていますがいちおう地上3階あります。地下1階は講堂、一般が入れない収蔵庫はさらに下なのかな?
 
 京都国立博物館の旧館(常設展示館)が建て替えのため閉鎖されたのは2008年末頃だったでしょうか。旧館には足繁く通ったと威張れるほど行っていたわけではないですが、誰もいない食堂でまずいうどんを幾度となくすすっていた記憶は残っています。そう、常設展示が主だった旧館って、いつ行ってもほとんど誰もいないっていう印象しかないんですね。
 すっかり生まれ変わった京博の新館、設計は美術館建築の第一人者(といっていいのかな)谷口吉生さん。代表作には東京国立博物館の法隆寺宝物館や愛知県の豊田市美術館など、言われてみればどことなく共通性がある佇まいだなあと感じました。たいへんシンプルなつくりで、くどくどとした主張はほとんど感じさせないものの、独特のクセみたいなものはやっぱりあるぞという、ちょっと他にたとえようのない感覚をもたらす建てものです。中に入ってみての動線が、一見フリーダムなようで実は明確な正解があるというのは豊田市美術館に行ったときも感じましたが、ここ京博新館でも同じような感触を覚えました。なんていうんでしょうね、設計士の想定したルートはあるんでしょうが、そこから逸脱したルートでも鷹揚に受け止めてくれて、でもあとから思うにああ、あっちのルートこそが正解だったんだなと気づき、じゃあ今度はそっちに従ってみるかと思わせてくれる、つまりは何度でもリピートしてみたくなるような、そんなデザイン。
 
1409133 実は豊田市美術館を初めて訪れたとき(2013年、フランシス・ベーコン展)には軽く迷子になったというか、お目当ての展示室がどこなのかちょっとわかりにくくて、なんだかよくわからん建物だなあとか思ってたんです。ところが会場内をぐるり一周し終わり全体像を掴むことができると、なるほどそういう構造かと納得し、じゃあもう一周してみるかと思ったんですが、今回もあのときの感覚が甦りました。
 もっとも、京博新館は豊田市美術館に比べるまでもないほど単純なハコなんで、2、3回ぐるぐるしてしまえば満足しますけど。
 
 
 かつての旧館はいつ行ってもひんやりと暗く、カビ臭く陰気な雰囲気だった、という印象だけが強く残っています。ただし展示スペースそのものはひょっとすると前の方が広々としていたかもしれません。開館記念特別展なので展示点数を絞っているということはあるかと思いますが(それに人が多いと狭く感じますし)、むかしはもっと雑多かつ無造作に作品が並べられていたような気も。ま、このあたりは開館記念展が終了したあとの運用のしかたにも注目ですね。
 
 で、その開館記念展。京博が所蔵・管理する国宝/重文クラスの名品がここぞとばかりに並べられ、さすがに圧倒されます。第一期(9月13日~10月13日)には肖像画の名品〈伝平重盛像〉と〈伝源頼朝像〉(ともに国宝、神護寺蔵)が並び、いやあなんというか、クラクラしますねえ。印刷物ではまず再現できないだろう繊細なディティールを、ここぞとばかりに堪能してきました。
 ちなみに、展覧会にあわせて出版された同題のカタログには、これらの肖像画や〈舞踊図屏風〉〈宝誌和尚立像〉(顔がぱかっと割れて中からさらに顔が出てくるという、奇抜な木像です)など、会場で特に気に入っていた作品がことごとく掲載されていないのがちょっとショック。なんでやねん。
 
 
1409134 10月からは、あの超人気作〈鳥獣戯画〉全巻を一挙公開する特別展がはじまります。こちらはこちらでたいへんな人だかりが予想されますが、開館記念展の第二期(10月15日~)とあわせて今からとても楽しみです。ちなみに、新館2F東端にあるレファレンスコーナーでは、タッチパネル式の大型ディスプレイで鳥獣戯画全巻が子細に眺められます(甲・乙巻だけならiPadアプリにもありますが)。
 

2014 09 15 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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