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20年目のリバーダンス!
●Riverdance 20YEARS
東京公演 2015年04月03日〜04月15日 東急シアターオーブ
富山公演 2015年04月18日・04月19日 オーバード・ホール
愛知公演 2015年04月22日〜04月26日 愛知県芸術劇場 大ホール
大阪公演 2015年04月28日〜05月02日 フェスティバルホール
誕生20年を記念して、7年ぶりに来日した《Riverdance》。先週観た東京公演では、日曜の昼公演ということもあってか、小さいお子さん連れが多かったのがひときわ印象に残りました。たぶん、かつて親が熱狂していたので、ぜひ我が子にも見せたいってことで連れてきたんだろうなあ。なにせ最後の日本公演の年に生まれた子どもがもう小学生ですよ。7年という歳月の長さにあらためてしみじみします。
東京公演の会場は渋谷ヒカリエのシアターOrb。渋谷駅直結なので大変便利ではあるんですが、劇場としてはいささか狭いように感じました。ステージの上、向かって左側にミュージシャン席がみっつ。加えて右奥に大きなドラム/パーカッションのセットがあり、ダンサーがぶつからないのか心配になります。ここは左右幅だけでなく、どうやら奥行きもあまりなさそうなステージに見受けられます。こういうのって、ある程度の世界統一規格みたいなのがあると思うんですけどどうなんだろう。印象としては大阪フェスティバルホールの方がもう少し余裕があるように思われるので、実際にどんな感じになるのか、このあとの大阪公演がちょっと楽しみです。
客席の方はと言えば、1Fの前半、とくに一桁列だと、客席がフラットなので演者の足もとがまったく見えませんでした。なので、足もとを見たいRiverdanceのようなステージではかなりフラストレーションが溜まります。最前列で熱気をダイレクトに感じたい! という方は別として、この会場でこのショウのぜんたいを楽しみたいなら、1F後方かもしくは2F最前列がベストじゃないかな。特に、2Fからだとステージに映される照明のデザインもとてもよくわかるから、実はOrbに限らず他の会場でもおすすめのポイントでもあるんですけど。
シアターOrbのコンパクトさに合わせたというワケではないのでしょうが、出演者もずいぶんコンパクトになりました。生演奏ミュージシャンは4人で、ホイッスル/イリアン・パイプスのMatt Bashford、フィドルがPat Mangan、サックスがDarren Hatch。ドラムス&パーカッションとバウロン、さらに各演目のキューだしなどステージ上のキーパーソンとして八面六臂の活躍だったのがMark Alford(ただし、ミュージカル・ディレクターとしてクレジットされてるのはフィドルのPatさんの方)。かつてニコラ・パロフが担当していた東欧系の楽器はもちろん、アコーディオンもいないしキーボードやベースやギターはすべて録音…言っても詮ないことではありますが、やはり往年の豪華さを憶えている身にとってはいささか寂しくもあります。
ミュージシャン以上に寂しかったのがヴォーカル陣。ダンサーがヴォーカルパートを兼ねていて、みなさん決して下手ではないんだけど(むしろ上手だとは思う)やはり迫力に欠けることおびただしい。なかでもいちばん違和感があったのがゴスペル調の名曲〈Heal Their Hearts〜Freedom〉からタップの競演〈Trading Taps〉に行く流れで、さっきまで真面目な顔で朗々と歌い上げてたおにーさん(Michael Wood)がいったん舞台袖に下がったあと、ベストだけ脱いで剽軽なタップを踊りに再登場するんですね。うーん、せめてここだけはヴォーカリストとダンサーは別キャストであって欲しかった。
演目じたいは、新曲がひとつある以外はほぼ従来通り。さすが名曲揃いのRiverdanceとあって何度聴いても(観ても)そのたびに感激してしまいます。ただし演奏陣のソロパートではずいぶん崩すようになってしまって、もはや原曲のメロディが失われつつある曲も。ま、20年もやってりゃこうなりますわねえ…ていうかMattさんが特に崩しすぎなだけかもしれませんが。個人的にはRiverdanceの楽曲はどれも、スコア通りに端正に奏でる方が好みではあります。
* * *
やれコンパクトだの寂しいだの文句たらしいことをぐだぐだ言っちゃってますが、2008年の最後の日本公演以降も《Riverdance》は世界各地のどこかで公演を続けていたワケで、というか日本ツアーが頻繁に行われていた時代からすでに、他の国ではよりコンパクトなカンパニーが回っていたワケで。なにも今回の日本公演が特別なものではなく、むしろこのパッケージこそが<世界標準>。ていうかかつての日本公演だけが、いつも特別に豪華版だったということなんでしょう。
しかしそれならば、今回の20周年来日ツアーはもっと細かく日本各地を回って欲しかったかなあとも思うんですよね。東京2週間(15回)のあとは富山(2回)と名古屋(7回)を回って大阪(7回)でおしまい、というのはいささかもったいない。《ブラスト!》のように日本全国47都道府県を制覇しろとまでは言いませんが…いや、どうせならそれくらい派手な花火を打ち上げてもよかったかも。聞くところによれば公演のない鹿児島県でもCMを打っていたそうなんですが、だったらもっと地方公演を増やしたらどうなの、とは思いますねえ。昔の方がもっとこまめに各地を訪れていたんだぞ。
《Riverdance》は2003年にダブリンで開催されたスペシャル・オリンピックス開会式への出演で一区切りをつけている、というのがわたしの持論です。そのことはかつてメールマガジン『クラン・コラ』に書かせてもらったし(2003年12月号。当ブログにも再録してます→こちら。ちなみに、特典映像としてスペシャル・オリンピックス開会式映像も収録されている10周年記念DVD『The Best of Riverdance』(2005年)は、今回の会場でも販売されてます)、ほぼ同じ主張の文章を、世界一のファンサイトであるAirにも投稿したことがあります(→こちら)。このあたりの考えは、今回の公演を観てもほとんど変わりません。
ショウ・ビジネスとしてのRiverdanceとしていえば今回のステージは(わたしが観た回に限って言うと)成功を収めていたと思うし、ひょっとするとこれを機にまた頻繁に来日公演が企画されるかもしれませんので、そうなったらこちらもとことん付き合うつもりではあります。なにせ生涯でこれほど多く観てきたショウは後にも先にもこの一作だけ、ということもありますが、やはりRiverdanceはライブで観てこそ、“その一瞬”をリアルタイムで体験してこそ、との思いがなにより強いのですね。1999年の初来日以来、いやビデオ視聴を含めるともっと前からなんですけど、この稀代のステージショウと同時代に生きている喜びと幸せを、改めて感じている今日このごろです。
2015 04 14 [dance around] | permalink Tweet
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