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[Exhibition]:ユトリロとヴァラドン
古今東西、親子で人気画家という例はどれくらいあるのかな。中世のブリューゲルなんかは一家揃って画家だったし、日本画の上村松園・松篁はそのお孫さんまで著名画家。ここいらあたりはいかにも「名門」って感じですが、ヴァラドンとユトリロの場合は、それらに比べるとちょっと様子が異なるような。

●ユトリロとヴァラドン 母と子の物語—スュザンヌ・ヴァラドン 生誕150年—
東京展 2015年04月18日〜06月28日 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
広島展 2015年07月11日〜08月30日 ひろしま美術館
京都展 2015年09月11日〜10月18日 美術館「えき」KYOTO
佐賀展 2015年10月24日〜12月06日 佐賀県立美術館
【展覧会図録】
企画・構成 IS ART INC.
装幀者名記載なし
どうでもいい話ですが「スュザンヌ」ってどう発音するんだろ。「SUZANNE」が「スザンヌ」でも「シュザンヌ」でもなく「スュザンヌ」なのか。外国人名の日本語表記って難しいですね。
ユトリロは国内でも人気作家のひとりで、展覧会も幾度となく開かれています。わたしも以前このブログで感想文を書いたことがあります(→こちら)。その後も何度か来ていたようですが、どれも観ていません。別に嫌いな画家というワケではないんですが、10年前のこのときの展覧会でだいたい満足してしまったのかも。
いっぽうヴァラドンの方はといえば、2000〜01年に同じタイトル《ユトリロとヴァラドン展》というのが開催されたことがあったそうですが、わたしは未見。まとまった紹介はそれ以来になるのかな。もっと遡ると1972年にも同様の展覧会があって、ただしその時のタイトルは《バラドンとユトリロ展》。お、順番が逆だ。
母子ともにドラマティックな生涯で、とくにユトリロはなんとも波瀾な人生を送らざるを得なかった人でしたが、この母親の下でだったらこうなるのもまあ無理はないかなあ、と思うところはあります。両者とも父親が誰だかわからないというのはいいとして、ユトリロを生んだあともヴァラドンは恋に仕事に自分の道を突き進む。ユトリロよりも三歳年下で、彼の数少ない画家仲間でもあったアンドレ・ユッテルとの再婚なんかはその最たるものでしょう。自分よりも若い友人が自分の「父親」として後見人となるってのはその心境を慮るどころの話じゃない。
ユトリロが十代の頃からアルコール依存症になっていたのはやはりそんな環境だったから、と言っていいんでしょうね。生涯のうちかなりの時間を精神病院で過ごし、彼が絵筆を取るようになったのも治療の一環という面があったそうなんですが、画家として生前から高く評価されていたのはこの人にとってほんとに救いだったんだと思います。
モンマルトルを題材に、しかしその画面のなかには人物が描かれないか、いても後ろ姿だったりうんと遠くの方に小さく置かれているだけだったり。ユトリロは人物も風景の一部としてしか捉えていませんが、ヴァラドンの方は肖像画をはじめ人物画が主流で、どの作品もたいへん面白い。とくに目の描写が印象に残ります。
ヴァラドンは<恋多き女性>というより、もっとストレートに<人間好き>だったんでしょう。ドガが絶賛したというデッサンの線の確かさをみても、「人間を観察する」ことに長けているというか、人間への好奇心がひと一倍強かったんだろうなあという気がします。
会場には多くの肖像画が並んでいましたが、特に惹かれたのが1927年作の《自画像》。年譜と照らし合わせると六十歳を過ぎた頃の作品ですが、絵を観て最初に口にでた感想が「おっっっしゃれなおばちゃんやなあ」。さすがは若い頃から美貌のモデルとしてルノアールやロートレックなど大家に好まれ、浮き名も流しただけのことはあるなあ。ゴツい風貌、意志の強そうな眉と瞳。太い首から肩のライン、茶色いショートヘア。フォービズム的なワイルドなタッチで描かれているその像は、他の肖像画と比べてもかなりの知性の高さをもった人物として描かれているように見えます。
会場をなんどか行ったり来たりしていたんですが、あとから思えばこの自画像の前に立っている時間がいちばん長かったかも。この一作を観られただけでも、足を運んだ価値があったと思いました。
2015 09 27 [design conscious] | permalink
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