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ニーマイヤー展に行ってきました
●オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男
2015年07月18日〜10月12日 東京都現代美術館
2012年に104歳で亡くなった建築家オスカー・ニーマイヤーを紹介する展覧会。わたしはフラメンコのマリア・パヘスが《ウトピア UTOPIA》という作品を上演する際に少し調べたことがあって(関連記事はこちら→(1)(2))、以来ずっと気になっていました。リオ五輪に合わせてなにかしら関連する企画があるんじゃないかと思っていたところにこの回顧展のニュースを知って、先日ようやく観に行くことができました。東京都現代美術館(MOT)のみの開催で地方巡回は(いまのところ)なし、MOTでも全館を使った大々的なものではなく地下の企画室スペースのみという、これだけのキャリアを誇ったひとにしては物足りないところなんですが、まああまり贅沢は言いますまい。専用図録も作っていないとのことで、現代建築ってジャンルはひょっとしてあまり人気がないのかしら。
わたし自身、実は少しタカをくくっておりまして、どーせ誰もいないだろうと思っていたんですね。でもいざ中へ入っているとびっくりするくらい観客が詰めかけておりました。嬉しいことに、場内の展示物は一部を除いて撮影OK。人が若干少なくなるのを待って、わたしもばしゃばしゃシャッターを切ってきました。
人となりやその生涯の紹介はあまりなく、展示物も縮尺模型がメイン。展示室の一角を区切って上映されていた60分のドキュメンタリー映画を見ないのであれば、比較的短時間でさっくり見て回れます。模型になっているのは〈パンプーリャ・コンプレックス(1940年)〉〈カノアスの自邸(1953年)〉〈国連本部ビル(1952年)〉〈ブラジリア大聖堂(カテドラル)(1958年)〉〈アルヴォラダ宮(大統領官邸)(1957年)〉〈ニチロイ現代美術館(1996年)〉〈コンスタンティン大学(1972年)〉そしてワンフロアをまるごと使った〈イビラプエラ公園(1954年)〉の8つ。それぞれに簡単な解説パネルと、スケッチや設計図や写真のパネルが添えられています。
サンパウロにある〈イビラプエラ公園〉の30分の1模型は敷地内を歩き回れるもので、思わぬ「進撃の巨人」ごっこ。ニーマイヤー作品っていうとその多くは天を衝く高さのあるものというよりも、視界いっぱいにどこまでも続く平面的な広がりを持った建築物というイメージがありますが、そのスケール感を(縮小模型ではあるとはいえ)体感することができます。
模型をグラウンド・レベルで覗いて見たのが上の写真。建築模型じたいは発泡スチロールでできたシンプルなものですが、樹木や人間の模型が無数に配置されていて、ずいぶん手間暇かかったんだろうなあ、これ(模型制作は野口直人建築設計事務所)。
会場内で上映されていたドキュメンタリー映画は Marc-Henri Wajnberg 監督の《Oscar Niemeyer Un architecte engagé dans le siècle》(2001年)。モントリオール国際芸術映画祭で最優秀作品賞に輝くなどいくつもの国際映画祭で賞を獲った作品で、2003年には《20世紀最後の巨匠オスカー・ニーマイヤー》と題して日本語版DVDも作られました(発売;ナウオンメディア株式会社)。いまamazonを検索してみたらすでに絶版のようで、定価の倍以上の価格で中古品が取引されていて、これまたびっくり。ニーマイヤーの人と作品がコンパクトにまとめられたいい映画だし、せっかくの機会なんだから再版されてればなあ。
* * *
模型とパネルが大半を占めたこの展覧会、内容的にもオスカー・ニーマイヤーという世紀の巨人のほんの概略を紹介するにとどまった…という印象でした。かれ自身が直接生み出したモノとしての手触りがあまり感じられないというか。家具も展示されているもののほんのわずかだし、ニーマイヤーの波瀾な生涯についても全くと言っていいほど触れられていません(ドキュメンタリー映画を見ろってだけではちょっと不親切でしょ)。まあ、日本では今回がはじめての回顧展ということだし、いつの日かもっともっと本格的な展覧会が企画されることを願いたいものです。
2015 09 22 [design conscious] | permalink
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