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展覧会感想メモ(2016冬〜2017春)

 
 音楽ライブやダンス公演にはしばらく無縁の生活で、今やすっかり<美術展感想ブログ>になってます。その美術展も、実は観に行ったもののツイッターにもつぶやいてないものがけっこうありまして。以下、2016年の年末から約半年くらいの落穂拾いというか備忘録として、軽くメモを残しておきます。
 
 
■2016・若冲イヤー
 2016年4月から5月にかけて東京都美術館で『生誕300年記念 若冲展』が開かれていて、ものすごい人混みが話題になっていたのは記憶に新しい。同じ年、京都でも若冲関連の企画がいくつも組まれていた。そのうち、わたしが出かけたのはこのふたつ。
Jakuchu2016
●若冲の京都 KYOTOの若冲
 2016年10月04日〜12月04日 京都市美術館
●特集陳列 生誕300年 伊藤若冲
 2016年12月13日〜2017年01月15日 京都国立博物館
 若冲展はこれまで何度も開かれているので、たぶん代表作の大半はすでにどこかで目にしているはず。それでも観るたびに新鮮で面白いのだから、人気の高さもわかるというもの。2016年で生誕300年という“一区切り”を終えると、まとまった展示はしばらく目にする機会が減るのでは…などとも思ってしまうけれども、若冲ならそんな心配も無用かもしれない。
 上記の両展はたしか同じ日に梯子して、さらにその足で若冲の墓がある深草の石峰寺にも回ったと記憶している。石峰寺の裏山に並ぶ五百羅漢の石仏群はこの時が初見だったけど、実に壮観だった。
 展覧会の方は「拓版画」の黒々とした画面に魅入られて、ガラスケースの前からしばらく動けなかったのを覚えている。
Sekihouji
 
■久方ぶりのムナカタ
Munakata
●わだばゴッホになる 棟方志功展
 2016年11月19日〜2017年01月15日 あべのハルカス美術館
 手元に残る図録によれば1993年の『生誕90年記念展』(東京/京都/大阪)以来となるはずだから、棟方志功をまとめて観るのはけっこう久しぶり。「釈迦十大弟子」など代表作のいくつかなら数年おきにどこかで観ているように思うんだけど、こうして画業を年代順に観ていくのはとても壮観だった。実に見応えのある、充実した内容で大満足。
 
■待望の西洋中世絵画×2連発
Venetian
●アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち
 2016年07月13日〜10月10日 国立新美術館
 2016年10月22日〜2017年01月15日 国立国際美術館
Cranach
●クラーナハ 500年後の誘惑
 2016年10月15日〜2017年01月15日 国立西洋美術館
 2017年01月28日〜04月16日 国立国際美術館
 
 関西でルネサンス期の西洋絵画を観る機会って、それほど多くはないと思う(おそらく専門的にコレクションしている美術館ってほとんどないんじゃなかろうか)。貴重な機会なので、ヴェネツィア展の閉幕直前&クラーナハの開始直後と、2017年1月に連続して出かけ、浸ってきた。どちらも楽しめたんだけれど、より印象に残ったのはクラーナハの方かな。なにせ同一会場にマルセル・デュシャンまで展示されてるとは思いもしなかったので。これは500年前から現代へとつながる、西洋絵画の歴史性を示唆してくれるナイスな企画だったと思う。
 
■ナビ派のエッセンス
●オルセーのナビ派展
 2017年02月04日〜05月21日 三菱一号館美術館
 
 “ナビ派”って、美術の教科書にはそれなりに大きく扱われるけれども、実作をまとめて目にする機会というのは、そういえばこれまであまりなかったかも。個人的にはボナールがいっぱい観られて嬉しかった。ボナールの作品って—ドニあたりもそうだけど—どこか浮世離れというか、この世あらざるものという雰囲気が画面から感じられて、ぞくぞくするんですよね。この浮遊感はどこから来るんだろう。中間色を多用した色遣いと、粗いながらも緻密なタッチの組み合わせがそう感じさせるゆえんなんだろうか。…などといろいろ考え込みながら、会場を巡った。「本格的なナビ派の紹介」展にもかかわらず、観終わったあとになお謎がたくさん残る(それゆえに後を引く)、ミステリアスな展覧会だったと思う(クセになりそうな、と言い換えてもいいかな)。
 
■画家の友情!
Mandr
●マティスとルオー 友情50年の物語
 2017年01月14日〜03月26日 パナソニック汐留ミュージアム
 2017年04月04日〜05月28日 あべのハルカス美術館
 
  アンリ・マティスとジョルジュ・ルオーが生涯にわたって親密な交流を続けていたというのは(美術ファンなら常識だったのかもしれないけど)、全く知らなかったことなので、それだけでも興味深い。わたしはどちらかというとマティス目当てに出かけたんだけど、思いのほかルオーが面白かった。ていうかもっときちんとルオーを知っておかなくちゃな、と思わされた展覧会だった。

■レトロモダンなど3題+1
Hisui
●愛媛県美術館所蔵 杉浦非水 モダンデザインの先駆者
 2017年04月15日〜06月11日 細見美術館

Kodomonotomo
●描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展
 2016年02月20日〜03月27日 板橋区立美術館
 2016年10月15日〜11月27日 兵庫県歴史博物館
 2017年04月22日〜06月04日 刈谷市美術館
 2017年06月22日〜08月06日 天童市美術館
Yumejiroman
●夢二ロマン 神戸憧憬と欧米への旅
 2017年04月15日〜06月25日 神戸ファッション美術館

 近年の流行なんだろうか。日本のレトロモダン系って、どこかしらでしょっちゅうやってるイメージがある。
 わたしが最近足を運んだのは上のみっつ。このうち杉浦非水は、日本のグラフィック・デザイン史を語る上で絶対に欠かせない人物なんだけど、愛媛出身とは知らなかった。色遣いといい構図といい、さすがとしかいいようのない絶妙なデザインワークで、たいへん楽しめた。至福。眼福。ありがたや。
 『大正モダン・キッズ展』(秋の姫路会場をうっかり見逃していたので、GW期間中に刈谷会場までバイクをひとっ走り)の方は、冒頭に北澤楽天がたくさん出ていてびっくりしたが、見どころは中盤から後半にかけてがっつり取り上げられた村山知義だと思う。2012年に全国4会場を巡回した村山初の大回顧展(そのときの感想は→こちら)では、どちらかというと傍流的な扱いにされていたかれの児童向けイラストレーションが、本展ではむしろこれこそが本業だといわんばかりに大プッシュされていたのが面白かった。両方の図録を並べて読むといろいろ感慨深い。
 その『大正モダン・キッズ展』にも重要な役どころで登場していた竹久夢二は、神戸でもっと詳しく紹介されている。夢二最晩年の欧米旅行から始まるという、ちょっと意表を突いた会場構成が面白かった。ただしこの旅行は本人的には期待していたほどの収穫が得られず、はなはだ残念なものに終わったらしいが(しかも旅先で病魔に冒され、帰国の翌年に没してしまう)、旅先で描かれたスケッチはどれも見応えがある見事なものだった。なかに現地の少年を描いたものが数枚あって、どれもエロティックな顔立ちなのが特に印象に残った。
 渡航先では、日本国内の人気に比べ芳しい評判を得られなかった(思ったほど絵が売れなかったので、滞在中は金銭的にも苦労したらしい)夢二だが、通して観るとその理由はなんとなく判る気もする。このひと、いい意味でアマチュアぽさが終生抜けなかったんだろうなあ…。かれが願っていた通りの、もっと若い時期での渡欧が可能だったら、その後の人生も全く違った展開になっていたかも知れないけど、こればかりは時の運に恵まれなかったというしかない。残酷な言い方だけど、その儚さも含めてこその「竹久夢二という人生」だったのだろう。
 
●国産アニメーション誕生100周年記念展示
 にっぽんアニメーションことはじめ〜「動く漫画」のパイオニアたち〜展
 (前期)2017年04月06日〜05月30日
 (後期)2017年06月01日〜07月02日 京都国際マンガミュージアム
 上みっつの<レトロモダン展覧会>とは若干テイストは異なるけれども、時代的には合致するのでここで触れておく。展示室の規模は小さいながらも、その分たいへん密度の濃い企画展だった。前期を観た感想としては「会場で観てるだけじゃ頭がついてこない!」。フルカラーの大層な図録とまでは言わないが、ここまでの研究成果をわかりやすくまとめた書籍を、広く一般向けに公刊すべきではなかろうか。
 とにかく、会場の膨大なパネル群は隅々まで読まなきゃならないところが多くてたいへんだった記憶しかない。いつの日かなんらかの形でまとまった研究書が出版されることを切に願う。ともあれ、後期展示も楽しみにしております。
 
■あちこち私立美術館
 ここまで挙げた美術館は国立はじめ公立のものが大半だけど、もう少し規模の小さい私立系美術館にもいくつか足を運んでいる。
Kumagai

●没後40年 熊谷守一 お前百までわしゃいつまでも
 2017年03月11日〜05月07日 香雪美術館
 
●上村松園・松篁・淳之展 三代に見る日本画百年の流れ
 2017年03月22日〜06月25日 松伯美術館
 
 熊谷守一は、名前だけはよく聞いていたけどその画業はほとんど知らないままだったので、たいへん楽しめた。作品そのものも以上に画家本人のキャラが凄いなあ。ショップで画家の写真集(!)があって思わず買いそうになった。
 松伯美術館への訪問は2度目だったか3度目だったか。わたしは昔から上村松園好きなんだけど、今回は松篁の作品群に見惚れてしまった。うーん、今まで食わず嫌いだったのかしらん。
 
 その他、香雪美術館のすぐ近くにある世良美術館にも初訪問。ピアノ教師で本格的に画業を開始したのは30歳になってから、という世良臣絵さんの個人美術館で、繊細なボタニカルアートが堪能できたんだけど、個人的にいちばん印象に残ったのは、師匠である小磯良平が、世良ピアノ教室発表会のプログラム用に描いたスケッチ(会場2階に展示)。なんとも小粋でオシャレで、絵の前で思わずうわあ、と声をあげてしまった。後日あらためて六甲アイランドの神戸市立小磯記念美術館も訪問し、素敵な時間を過ごすことができた。シアワセ。
 
 個人美術館といえば大津市立長等創作展示館・三橋節子美術館もとてもよかった。わたしが訪れた時は他に観客がおらず、ほとんど貸し切りのような感じでひとつひとつの作品とじっくり対面できたのがなによりだった。自宅から思い立ってすぐ行ける距離感なのが嬉しい。
 
■がんばれMOMAK
●戦後ドイツの映画ポスター展
 2017年04月19日〜06月11日 京都国立近代美術館
 
●キュレトリアル・スタディズ 泉/Fountain 1917-2017
 2017年04月19日〜2018年03月11日 京都国立近代美術館
 
 いずれも特別展ではなく「常設展示」の入場料で観られる展覧会。映画ポスター展の方は、ここ何年にもわたって東京国立近代美術館フィルムセンターとの共同企画として世界各国の映画ポスターを集めた展覧会をしていて(過去にはソヴィエト、キューバ、フランス、日本、チェコなど)、そのたびに楽しませてもらっていたが、今回のテーマは東西分裂時代のドイツ。西側よりも東ドイツのポスターの方が観ていて楽しかった(東側の方が面白いってのは過去のソ連やチェコ、キューバなんかで感じていたけど)。「映画」というテーマに絞ったこのシリーズはほんとに好きなので、長く続いて欲しいなあ。今後はアジア圏やアフリカなどもっといろんな地域のも観てみたい。
 『泉』の方は、マルセル・デュシャン『泉』が発表されて今年で100年ということで、現代美術に大いなる影響を与えたかの作品とその作者についてもういちど考えてみようという好企画。
 京近美はたしかピカビアの作品もそこそこ所蔵しているはずなので、常設展示階の小さなスペースではなく特別展で大々的に『ニューヨーク・ダダ』を特集して欲しいなあという希望はあるものの、本展は小規模ながらも見応えたっぷりだったし、今後5回にわけて展示替えをするということで、年間を通じいつ行ってもデュシャン作品に会えるっていう趣向は実にありがたい。同じ国立近代美術館とはいえ、東京に比べてハコがかなり小さい京都ではあるけれど、今後ともがんばってほしいものであります。
 

2017 05 14 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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