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55年目のThe Chieftains
結成55周年&日本アイルランド外交関係樹立60周年
ザ・チーフタンズ来日公演2017
埼玉公演 2017年11月23日 所沢市民文化センターミューズ アークホール
滋賀公演 2017年11月25日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
兵庫公演 2017年11月26日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
愛知公演 2017年11月27日 Zepp Nagoya
東京公演 2017年11月30日 Bunkamuraオーチャードホール
長野公演 2017年12月02日 長野市芸術館メインホール
神奈川公演 2017年12月03日 よこすか芸術劇場
東京公演 2017年12月08日 オリンパスホール八王子
東京公演 2017年12月09日 すみだトリフォニーホール 大ホール
そういえば前回チーフタンズのライブを観に行ったのっていつだったっけ…と本棚を探してみたら、「結成50周年記念ツアー」と銘打たれた2012年のパンフレットが出てきました。うわあ、あれからもう5年なのか。確か前回も「もうそろそろこれで最後かも」などと思っていたものですが、ともあれ、お帰りなさいチーフタンズ!
55周年記念ということで、開演冒頭に彼らの足跡を振り返る映像が流れます。わずか数分間のムービーで強調されているのがとにかく共演者の多彩さ。1975年のスタンリー・キューブリック監督作品《バリー・リンドン》への参加の成功を皮切りにして、ヨーロッパのミュージシャンとしては史上初となる中国公演(1983年)以降、欧米そして日本人ミュージシャンとの数々の共演の記録(映像的にはほとんどツーショット写真ですが)がこれでもかと流れます。ああ、これこそがチーフタンズなんだなあ。世界中のどこへ行っても、そして誰と一緒にセッションしようとも、彼らはぶれることなく自らの音楽を貫き通した。簡単そうに見えて(というかチーフタンズはいつだってまるで簡単そうにやってのける)実はとても難しいはずの<異種格闘技>の歴史こそ、チーフタンズがチーフタンズたり得る証なのでしょう。
11月25日の滋賀公演に足を運びました。他の会場では矢野顕子さんをはじめとする多彩な日本人ゲストを迎えるようなのですが、滋賀公演はそういうビッグネームは事前にはアナウンスされておらず、まあレギュラーメンバーでひっそりやるのかなあ、などと思っていたワケですよ。ところがところが。
アンコールを含めても正味1時間半たらずという非常にタイトな上演時間で、正直なところ「え、これで終わり?」「もっと聴きたい!」と感じたのも確かではあるんですけれ、それでも、その1時間半を彼らは実にきっちりと、綿密かつ濃厚に詰め込んできました。メンバーそれぞれのソロ・パフォーマンスもちゃんと入れ、もちろんバンドアンサンブルもしっかり聴かせ、なおかつ、サプライズゲストとして登場した日本人コーラス・グループ「ANONA」(アイルランドのコーラス「アヌーナ」のカバーバンド)と東京パイプバンド(言わずと知れたスコティッシュ・ハイランドパイプの老舗バンド)の見せ場もきっちり作る。当然ながらキャラ・バトラー&ピラツキ兄弟のダンスもたっぷり見せる。全編みどころききどころであり、一瞬たりとも目が(耳が)離せないとはまさにこのことでしょう。
ゲストが何組いようが、ちゃんとそれぞれが生きるようにフィーチャーしつつ、なおかつ、メインアクトはあくまでわれらがチーフタンズなんだぜ、っていう、ナマの現場での仕切り力って言うんですかね、パディ・モローニはそういうスキルに非常に長けているわけでして。そりゃまあそうだよなあ、なんてったって百戦錬磨の大ベテランなんだしなあ。
今回の滋賀公演で個人的に感銘を受けたことがひとつありまして。
ステージ後半、キャラ・バトラー+ピラツキ兄弟のダンス隊にヴォーカルのアリス・マコーマックが加わって、計4人でセットダンスをちょこっとやったんですね。アイリッシュ・セットダンスは通常8人一組なので今回はいわゆる「ハーフ・セット」編成なんですが。ぶっぱやいポルカに乗せて、踊ったのはたしかセットダンスの定番中の定番でもある《Castle set》だったかと思うんですが…アレって同じようなフィガー(動き)が続くのでけっこう間違えやすいダンスでもありまして(ていうかわたし、未だに覚えられません)。アリスさんが途中で動きの段取りを間違えそうになったんですね。で、ダンサーみんながちょっとバラバラになりかけた。そしたらパディ・モローニがすかさず「Ladies' Chain!」と、ダンス・マスターよろしく直後のフィガーをコールしたんです。その一言でセットは持ち直して、無事に最後まで踊り切れた。いやあ流石によく見てるなあとつくづく感心したし、心底感動もしました。現場力ってこういうことなのか。演奏のことならともかくダンス陣のパフォーマンスにまでも、舞台上で起こる全てにちゃんと目配せをし、ヤバいと思ったら瞬時に良い方向へとコントロールできる。簡単なように見えますが、ここまでやれるミュージシャンって(ケーリー専門バンドならともかく、いやもしかすると専門バンドでさえ)なかなかいないんじゃなかろうか。
で、そのパディ・モローニがホイッスルを一吹きするだけで、すでに「ザ・チーフタンズの音」になってしまうという。
…正直なところを申せば、実はわたしはチーフタンズのあまりいいリスナーではありません。どんな曲を演奏しても結局いつものチーフタンズ・サウンドなんだよなあ、という意味で、CDなどはあまり何度も聞き返したりはしないんですが、やはりこういうライブの現場ではその際だった個性こそがもっとも重要だったんだ、と今更ながらに思い知らされたのでした。このあとの日本ツアーではもっと多彩なゲスト陣が登場する予定になっていますが、そんな多士済々をまとめ上げ、一夜のエンターテインメント・ショウとして観客に提示するにあたっては、やはりたった一音でソレとわかる強烈なメッセージが必要なのであって、パディ・モローニのホイッスルには、いつだってまさにその「必要不可欠な一音」が入っているんですね。
これまで何度も来日公演を観ていていまさらかよ、てな感想ではあるとは思いますが、いやあ、やっぱりライブっていいもんですよねえ。そんなことをしみじみ感じた一日でした。
2017 11 25 [dance aroundface the music] | permalink
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