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ゴッホが出会った日本

Gogh2018
●ゴッホ展 巡りゆく日本の夢
 北海道展 2017年08月26日〜10月15日 北海道立近代美術館
 東京展  2017年10月24日〜2018年01月08日 東京都美術館
 京都展  2018年01月20日〜03月04日 京都国立近代美術館
 オランダ展 2018年03月23日〜06月24日 ファン・ゴッホ美術館
       ※タイトルは『Van Gogh & Japan』、但し展示内容に一部相違あり
 
 本展はアムステルダムにあるファン・ゴッホ美術館と日本の三つの美術館による国際共同プロジェクトで、ゴッホが日本美術、とりわけ浮世絵から多大な影響を受けたことを細かく検証するもの。それだけでなく、ゴッホの没後かれの墓を訪ねる日本人が数多かった事実を丁寧に解き明かし、「ゴッホが夢見た日本」と「日本人が受け取ったゴッホ」という双方向のベクトルを提示しているのが面白かったです(後者の展示はオランダ展では割愛されるらしいのが少し残念ではありますが)。
 
 ヨーロッパ先進国を中心にジャポニスムがブームになったのは19世紀末から20世紀初頭。当時活躍していた画家に関して近年開かれる美術展では、影響を受けたとされる浮世絵などを並べて展示するのが当然のようになっています。こういう編集手法がいつごろから始まったのかは詳しくは知りませんが、わたしのブログを遡ってみると1993年から94年にかけて全国5会場を巡回した『ロートレックと日本展』に触れているエントリがあり(→参照)、遅くとも1990年代にはこういう展示が試みられていたことがわかります(それ以前でも写真パネルなどの「参考資料」扱いで展示されていた例があったような気が)。
 上のブログ記事ではまだ物珍しそうな感想を述べてますが、最近の「西洋近代絵画とジャポニスム」関連企画ではこの手法はもはや定番中の定番で、たとえば2014年の『ホイッスラー展』(→参照)、同年の『ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展』(→参照)、2015年から翌年にかけての『ビアズリーと日本』(→参照)など過去記事をちょっと検索するだけでずらずら出てきます。ジャポニスム研究がそれだけ進んでいることのあらわれなんでしょうね。
 
 ゴッホといえば浮世絵好き、というのはわりと一般的なイメージだとは思うものの、過去にみたいくつかのゴッホ展ではその部分をことさらに強調した展示はあまりみかけなかった気がします。このブログでは2005年の『ゴッホ展—孤高の画家の原風景』の感想を書いてますが(→参照)、ここでは浮世絵はあくまでもゴッホをかたち作ったうちのひとつ、という扱いにとどまっていたと思います。ゴッホ展はもうひとつ、2012年から13年にかけて4会場で巡回していたものも観に行ったけど(ブログ記事はなし)、こちらは画法に関する科学的な分析が主なテーマだったこともあり、浮世絵からの影響について大きく関心をよせる内容ではありませんでした。
 で、今回は徹底して「浮世絵」づくし。何も知らずに観に行ったら、たぶん「ゴッホって浮世絵からだけしかインスパイアされなかったのか」と勘違いしてしまうんじゃないかと思うほどですが、もちろんそんなことはありません。いくつもある影響源のなかから今回は浮世絵に焦点を当ててみました、というだけにすぎないんですが(ゴッホ没後に墓地を巡礼する日本人画家が引きも切らなかったからと言って、かれらが生涯ゴッホしかあがめなかったわけではないのと同じですよね)、ぼんやりしてると「浮世絵→ゴッホ」という図式だけを覚えてお家に帰ってしまう羽目になりがち。まあ、このへんは観に来ている側の意識の問題なんで、展示内容に文句を言っているのではないですが。
 
 
 
 ゴッホはごく短いあいだにたくさんの技法やスタイルを恐るべきスピードで学んでいったので、この画家がもう少し長生きしていたらどんな絵を描いていただろう、とはゴッホ展を観るたびに考えることなんですが、案外静かでおだやかな作風になったかもしれないな、と今回の展覧会を観て思いました。作品内容的には、上に触れた前二回のゴッホ展もファン・ゴッホ美術館所蔵作品が主体なのでけっこう重複が多いため、初見の新鮮さという点ではやや劣るものの(日本初公開は4点だけ)、毎回切り口を変えた展示になっているので退屈さはあまり感じず、むしろ新たな目線で絵を眺められたかもしれません。
 このところ後期ゴッホはよく見かけるのですが(油絵タッチのアニメーションで話題になった映画『Loving Vincent』(2017年/邦題:ゴッホ 最期の手紙)も臨終の地オーヴェール=シュル=オワーズが主な舞台ということもあって、登場する作品群も晩年に近いものばかりだった)、個人的にはパリに出てくるまでの、オランダ時代の暗く重い初期ゴッホがけっこう好きだったりします。なので次は初期作品を集めた企画をやらないかな。まあ、思いっきり地味な展覧会になりそうですけど。
 

2018 01 21 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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