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『デンマーク・デザイン』展

 
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●デンマーク・デザイン
 長 崎 展 2016年12月23日〜2017年02月12日 長崎県美術館
 神奈川展 2017年04月28日〜06月25日 横須賀美術館
 静 岡 展 2017年09月09日〜11月12日 静岡市美術館
 東 京 展 2017年11月23日〜12月27日 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館
 山 口 展 2018年02月24日〜04月08日 山口県立美術館
 岐 阜 展 2018年04月21日〜06月17日 岐阜県現代陶芸美術館
 群 馬 展 2018年07月17日〜08月26日 群馬県立館林美術館
 
 日本でも人気の高い北欧プロダクト・デザインを紹介する展覧会と言えば、2012年から13年にかけて青森・栃木・静岡・長崎・兵庫の5会場を巡った『フィンランドのくらしとデザイン』展というのがありましたね(感想は→こちら)。あの展覧会では、どちらかというと<フィンランド挙げての国家プロジェクト>的な匂いを強く感じてしまったんですが(とはいえ、というか、だからこそ、というか。彼らが背負っている歴史性がモロにあらわれた展示内容だったとも思った)、それに比べると今度のはもう少しカジュアルかな。肩肘張らず気楽に楽しめました。
 

Denmark_2 デンマーク・デザインといってピンとくる人がどれだけいるのかはわかりませんが…というか、かくいうわたし自身、それほど深い知識など持ち合わせてはいないんですが、展示されていた品々を追って行くにつれて「うわーこれ見たことある!」「うぎゃあこれもそうだったの!?」「ああ、これ前から欲しかったヤツ!!!」など(心の中で)大絶叫。
 そういう、生半可でミーハーな知識と関心しか持っていなかった層にこそ、この展覧会はむしろドンピシャに嵌まってしまうのかも…などとも思ったり。
 
 デザイン史の教科書だとか、「20世紀のモダン・デザイン」を概説する図版多めの一般向け教養書だとか、そんなあたりに必ず載る作例の大半が、ここに集結してるんじゃないか。そんな錯覚さえ起こしてしまいそうな展覧会でした。出品点数も思っていた以上にボリュームがあって、最後の最後まで見飽きることがなかったのもポイント高い。
 さっきも書いたけど「あ、これ見たことある」「これ知ってる」がかなりの頻度で出てくるんですよ。つまりはデンマークのプロダクト・デザインがいかにわたしたちの日常(とその美意識)に深く浸透しているかということでもあって。
 で、それだけでもテンションがあがるんですが、でも<そういえばオリジナルの実物ははじめて見たかも>…たぶん、ここが重要なんですね。書籍の写真図版やレプリカ、あるいは似たような模倣品ならばすでにどこかで見知っている。でも「そのオリジナル」はこれなんだ、「そのデザイン」を産み出した源流はここにあったんだ、という理路がきちんと理解でききる。本展の最大の魅力は、まさにこの一点にあるのではないかと思うのです。
 
 椅子をはじめ食器やカトラリーなどの日用品と、ポスターなどのグラフィック作品で構成された本展は、しかし、「手に取れない」のがかなりもどかしい。日用品なんて「使ってなんぼ」ですからね。手触りはどんなだろう、、持ち上げたときの重さはどうなのか、椅子なら座り心地はどうなのかとか、体感しないとわからない部分はたくさんあります。ましてやここに並んでいるのは、コンセプトだけで突っ走った<デザインのためのデザイン>とはまるで正反対の、<ハイ・クォリティをリーズナブルに>をモットーに作られた工業製品がほとんどを占めています。奇を衒ったり単独で異様に存在感を主張するような家具ではなく、あたりまえのようにそこにいて、使い勝手にもすぐれた普段使いの道具たち。手に取ってみて、使ってみて、なんなら少々手荒い扱いもしてみてこそ、その真価がわかるというモノたち。
 まあしかし、本展はデンマーク国立デザイン博物館の収蔵品をはじめ、多くの個人コレクションを借りておこなわれているから、万が一のことがあっては大問題ですしね。なのでもちろんおとなしく「お手を触れないで下さい」に従っておりました。でも考えようによっては、ただ眺めているだけじゃぜんぜん物足りなくて、手に取ってみたい/使ってみたいと強く思わせることそれ自体が、すでに「すぐれたデザイン」である証なのでしょう。わたしはまんまとやられてしまいました。
 
 
 実は嬉しいことに、最後の展示室には<特別出品>として実際に座れる椅子がいくつか用意されてました。案内チラシによれば岐阜会場だけの特別企画なんだそうで。わーい、やったー。
Denmark_4 写真は実際に触ってみたり軽く持ち上げてみたり、そしてもちろん座ってみたりして特に気に入った椅子のひとつ。ハンス・ウェグナー(デンマーク語の発音では“ヴィーイナ”が近い表記になるそう)が1987年に発表したアームチェアで、このとき作者73歳! …とは思えないほど瑞々しい印象を受けた一脚でした。後方にはデザイン違いの背もたれ部分パーツも並べられていて、こちらも興味深かった。明るく開放的なダイニングルームなんかに似合いそう。こういう椅子が似合う部屋に住んでみたいもんですなあ…。
 

Denmark_3 岐阜展の会場となった岐阜県現代陶芸美術館は、岐阜県多治見市のセラミックパークMINOという施設の一角にあります。写真は駐車場から本館へ向かうアプローチです。この日は天気が抜群に良かったので、歩いていても実に気持ちがいい。新緑の季節のお出かけとして最高の休日となりました。

Tajimi↑こちらは駅から美術館へ向かう途中で撮ったもの。レトロポップでかわいい♪
 

2018 05 06 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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