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中川学さんのトークイベント

 
Ukiyo
●中川学 圖案繪集 UKIYO
 2018年02月04日初版発行/玄光社刊
 ISBN978-4-7683-0932-2
 アートディレクション&デザイン;泉屋宏樹(iD.)
 
 刊行以来、日本各地で行われていた中川学さんの出版記念トークイベント。過日、その最終回が地元である京都市内の<丸善 京都本店>で開催されました(その様子の一端はツイッター#中川学圖案繪集でも見られます)。
 中川さんが商業イラストレーターとして活動をはじめてもう22年になるそうで、同時に木屋町三条、豊臣秀次公一族が眠る慈舟山瑞泉寺のご住職もつとめるたいへん多忙な方です。わたくし、実はわりと古くからの知り合いではあるんですが普段はなかなか顔を合わす機会もないので、これは見逃してはならぬと参加してきました。いやしかし、初対面当時からずっと印象が変わらんと言うか、いつ見ても若々しいなあ。
 画家やイラストレーターのトークイベントというと、たいていご本人にプラスして担当編集者さんなんかが進行役をつとめることが多いかと思いますが、今回はブックデザインを担当されたグラフィックデザイナーの泉屋さんとの掛け合いトーク。これまたなかなか知る機会のない「デザインの裏話」がたっぷり聞けて、お得でした。カバーを外してアレをアレすれば、あらびっくりアレになる…!なんて仕掛け、直接聞くまで全然気づかなかった。泉屋さん曰く「電子書籍の時代だからこそ、書籍としての手触りや作りに意味を持たせたかった」とのことで、他にもページを超えて下絵と最終完成作を見比べやすいようにと考えられたレイアウトや、あるコーナーで特にアンティークな雰囲気を演出するために手間暇かけた工夫など、興味深いお話が出るわ出るわ。きっと、デザインしているあいだずっと楽しかったんだろうなあと想像してみたり。
 
 イベントの冒頭には、2013年の『第5回金沢泉鏡花フェスティバル』のために作られたアニメーション版「絵本 化鳥」が上映されました。このアニメーションは基本的には金沢市の泉鏡花記念館でしか観られないもので、関西ではわたしが知る限りは2度目(参考→過去エントリ)の上映、京都では初めてとなるはず。客席には同作はじめベストセラーとなった絵本『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(2014年/汐文社)や『だいぶつさまのうんどうかい』(2017年/アリス館)など、代表作の鉛筆書き下絵をまとめたクリアファイルなどが回覧されており、スライドトークを聞きつつ回ってきたそちらにも目を奪われ…と忙しい。
 
 画集未収録の新作や今後刊行予定の仕事なども気になりますが、わたしがいちばん印象深かったのは最後の質疑応答コーナーで出た話題でした。
 中川さんはAdobe Illustratorというグラフィックソフトで制作しているので(かなり古めのヴァージョンを使い続けていると伺ったことがあります)(しかもペンタブではなくマウスでお絵かき派)、物理的な、いわゆる「原画」が存在しません。あくまでベジエ曲線によるデータそのものが「オリジナル」。ソフト上ではCMYKでもRGBでも好きな数値で色指定できますが、モニタ画面上と家庭用プリンタでの出力、印刷機での印刷では当然ながら全部色合い等が異なります。その辺どうお考えなんですか、という意味の質問が飛びました。
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 画像は、右側がシルクスクリーン版画(を、自分で表具屋さんに持ち込んで額装してもらったもの。自室に大切に飾っております)。左は『UKIYO』5ページに掲載されたもの。この写真ではまったくわかりませんが、シルクスクリーン版の方は「ならでは」というべき印刷技法が施してあって、ほれぼれします。
 
「ぼくは割と気にしないというか、出たとこ勝負なんです」と中川さん。「家の簡易プリンタで出た色は、それはそれで正しいし、雑誌や書籍としてできあがったものもそれで正しいなと」この発言を受けて泉屋さんは「シルクだと刷り師、ポスターや書籍だと印刷所の校正士やデザイナーなど、関わる人によってどう出るかが変わってくる。それは現場の人次第なんです。その上で、中川さんが『ここだけは譲れない』という部分をどう形にするかがぼくたちの仕事だと思ってるんです」と続けます。「中川さん本人は微妙な色の違いとかあまり気にするタイプではないんですよね」とも。
 データはあくまでデータであって、実物としてカタチになったものはそれだけでどれも全てかわいいんですよ、と中川さん。それだけにディレクションの力が問われるんですよね、と泉屋さん(なので、大きな印刷会社だと「プリンティング・ディレクター」という役職が存在します)。なるほど、この「割り切り方」はいかにも中川さんらしい態度だな、と思いました。
 本書のタイトルは「UKIYO」ですが、これはもちろん江戸時代の「浮世絵」から来ているもの。考えてみれば浮世絵も下絵師/彫り師/摺師と完全分業体制で、最終的には摺師の力量次第で仕上がりの良し悪しが決定します。そうか、中川さんはそういう意味でも現代の浮世絵師のひとりと言って差し支えないんだよなぁ、と納得した次第。
 
 非常に個人的なことなんですが、奇しくもこの日はわたしの○○回目の誕生日なのでした。これ以上ない、素敵な誕生日プレゼントを貰った気分です。中川さん、泉屋さん、ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。
  

2018 07 16 [booklearning, design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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