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久々のマティス展

 ○○美術館展などで他の画家と一緒に数点、というのはたくさん観てきたけれども、マティス単独の回顧展となるといつ以来だろう…とブログを遡ってみたら、なんと2004年、国立西洋美術館で観たマティス展が最新でした。およそ20年ぶりなのかぁ…さらに「その前」となると1981年、東京/京都ふたつの国立近代美術館でのマティス展! 確かエルミタージュ美術館所蔵の大作『ダンス』にたいへん衝撃を受けたのがこのときではなかったかな。まだ展覧会というものに不慣れだった頃で、“実物を間近で見る”ことの面白さに目覚めたほぼ最初の体験だったような。入場前からひたすら並び、場内の混雑ぶりに目を回した記憶とともに、未だに印象深い展覧会のひとつです(チケット売り場で延々並んでいる光景は後々まで夢に出てきました)。


 今回のマティス展は、同じ上野公園内の、今度は東京都美術館での開催です。前回の04年展はデッサンが多めで、企画を絞ったどちらかというと小ぶりな内容だったと記憶していますが、今回は初期作から最晩年までをまんべんなく網羅した、いかにも回顧展らしい回顧展でした。

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マティス展
HENRI MATISSE:The Path to Color

2023年04月27日~08月20日 東京都美術館


 出品作はポンピドゥー・センター所蔵作品を中心に、日本国内の美術館所蔵品などもいくつか。長い会期の終盤に行ったにもかかわらず人出は多く、人気の高さを伺わせます。会場出口に広く展開された物販コーナーの商品の多さもケタ違いで、展覧会グッズは今やかなり大きな収入源なんでしょうねえ。

 マティスの画風は生涯を通じて時に大きく、時にゆるやかに変容していきますが、個人的には両大戦間期、1920年代-40年代初期頃のタッチがいちばん好きです。本展の構成に従うと「4.人物と室内 1918-29」「5.広がりと実験 1930-37」「6.ニースからヴァンスへ 1938-48」あたり。ほれぼれする描線のデッサン作品もたくさんあって、この時期のものはもっとたっぷり観たかったな。まあ、特定の主題をたくさん観たいとなると若干物足りなくなるのはこの手の回顧展ならではですね。

 本展としては晩年期、とくにヴァンスの礼拝堂に関するあれこれが目玉のひとつなのでしょう。主催団体のひとつであるNHKがこのために現地に撮影に行っていて、最後の部屋に大きなスクリーンで流してました。美術家ひとりでひとつの礼拝堂の装飾を担うのって、他にフジタが思い浮かびますが、それ以外でも結構よくあることなのかな。いろんな礼拝堂装飾美術だけを特集した企画展があったら観てみたいなあ。

Matisse_2023
・展覧会図録
発行/朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション
デザイン/田部井美奈、栗原瞳子
 

 カタログ巻末に掲載されている詳細な伝記が読み応えがあり、これを読むためだけでも買った価値がありました。個人的に、会場内では解説文を含め文字情報はあまり触れたくなくて(まあそれでもつい読んでしまうんですけどね)、その分図録の方にテキストの充実を求めてしまいがちなので、資料性の高い図録は大歓迎であります。

 上の写真、背後のポスターは『ジャズ』シリーズから「イカロス」。30年以上前に買ったシルクスクリーンで、ずーっと実家の玄関で来客を出迎えてくれてます。

2023 08 15 [design conscious] | permalink このエントリーをはてなブックマークに追加

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